2話
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は――全く気付かれていなかった。
二人が去った後も、話題はこれに尽きた。
野次馬達も、その場にいなかった者達も、舌で転がすように語り明かす。
女子ばかりで、男性が少ない日常でこんなに「美味しい」モノもない。
今は昼休み。
食後の甘味も良いが、もっと甘く新鮮な「ネタ」なら――
――膨れる妄想も、続く尾鰭も、留まることを知らないらしい。
勝手に先へ行く衛宮教諭の後を追い、ついて行く最中、ふと思う。
仮に学食へ向かったとして、食券もなにも買えない。理由も彼なら分かるハズ。
なんのことはない。金銭の貸し借りは風紀的に「大問題」だからだ。
当然、教員たる彼も貸さないだろうし、高音も借りるつもりもない。
それを危惧したが、途中で道を変える。
いや、学食が高音の頭にあっただけで、彼自身はこちらが正解なのだろう。
すると――自然、その行き先への推測へと思考がシフトする。
今居る所は実習科棟。
そのまま半ば答えに到りながらズルズルと先延ばしについていくと――
「家政科教員室?」
――広大な敷地を、ほぼ教育機関に割り当てた麻帆良の校舎は、実習室・準備室の他に学科毎の教員室が設けられている。
ここは当然、「家政科教員室」なのだから、家政科の教員の為の部屋になる。
そう、つまり――
この「衛宮教諭」は家政科の教員だった。
失礼します、とお決まりの語句と共に入室すると、少し驚きの顔をされたがにこやかに「どうぞ」と返される。
正直に言えば、ここへは来たことが無い。
そして、その教員達も全て知った顔でもない。
まあ、分かってはいたことだが――女性ばかりだった。寧ろ、女性しかいない。
ただでさえ、女子校に男性教諭となると極端に少なくなる。居たとして年輩や既婚者だろう。若い独身男性は稀だ。
ましてやそれが“家政科“ともなれば、当然かもしれない。
「女性は家庭を守る者」と言いたい訳ではないが、今も昔もこういった場所へ男性が踏み込むのは稀だった。
さぞ、男性一人――と云うのは肩身が狭かろう、と。
「グッドマン。君はそちら――
そう、その右端の空いている席に座りたまえ。そこが私の席だ」
言われた通りに座る。
その机の上に、男性らしい大きめの弁当箱が置いてあった。
『そういえば、久しぶりですね』
割と長い付き合いの割に、この麻帆良に来てからは彼の料理を口にしていない。――純粋に、ちょっとたげ……本当に“ちょっとたげ“――嬉しさもあった。
そんな感傷に浸っていたのだ。だから、懐かしさに触れる問いが来たら思わず「はい」と言ってしまうのも仕方ない。
その返事に滅多に見せない子供っぽい笑顔で返されてから――その問いを言葉で理解し
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