2話
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れば、そこに干渉出来るのもまた、似たような存在か全くの別物だけ。
「何をやってるんだ、 “グッドマン“」
ぴくっ、と肩を撥ねさせ、その男声に反応する。
些か過剰な反応だ、と自身でも感じていたが、ある意味それも当然かもしれない。
男声こそ衛宮士郎と名乗る、高音の従者にして女子高等部の教諭だった。
廊下に並んで窓際に立つ男女。
右に――腕を組んで、何とも嫌らしい笑みの長身男性が衛宮教諭。
左に――手を前に降ろし、指を絡めながら俯く女性は言わずもがな、高音だ。
「ふむ。つまり、寝坊して朝食を抜き、昼食のみならず金銭すら持参するのを忘れた、と」
あれから現状を「かなり厚くオブラートに包んで」説明した。
幾度も一日に失敗もすれば、身を保つ自尊心も摩耗し、「牽制までして」かなり厚くオブラートに包んで知人に話しを聞いてもらうのも吝かではなかった。
無論、最低限の自尊心から「決して愛衣や他の方々には言わないように!」と釘もさしておく。まだ完全に摩耗していない。絶対に。
……だというのに、この男。
あまりに身も蓋も無い言い様はなんだろうか。落胆とは別ベクトルのムカムカした『前衛的な』感情の赴くままに、キッと睨み付けてやる。『前衛的な』のは、怒っていて、哀しんでいて、恥ずかむ感情の総乱れの表情なのだろう。眉がつきそうなくらい中に寄っていて、涙目且つ羞恥に顔を真っ赤にすれば、きっとそうなのだろう。
少なくとも士郎には――いや、何故か思い当たる節があった。本当に何故か。
終始嫌味な笑みを絶やさなかった士郎だが、ここに到り、組んでいた腕を崩し、目を瞑って眉間に寄った皺を揉む。
一度、二度。
三度目にもなると、高音の方でもその様子の変わり様に、幾分気が安らぐ。
四度。揉みほぐすのをピタリと止め、左目だけを開き高音を見詰める。
「あー……、流石に朝も昼も――では健康にも悪いし、精神面でも悪影響を及ぼすしな」
彼は昔からそうだった。こういった女性の顔には弱いし、いつも怒らせてばかり。興に乗ってからかい過ぎた。いや、ヒトをからかっていなくとも――昔から、怒らせてばかりだった。
ふむ。ともう一度頷きを入れ、再び高音を見る。
見上げてくる顔は、険も取れて呆気っとしている。目尻の玉の涙と、涙痕残る頬に注す朱が、より幼さと愛らしさを強調する。
思考が追い付いてない。そんな顔だ。が、これはとても「破壊力」がある。……少なくとも、当人達以外の野次馬には。
「ついて来い。何時までここに居ては埒が明かん、移動するぞ」
ぽふ、と音でもしそうな柔らかい髪に、帽子越しに手を置きながら言う。
その二人の様子に、幾人かの興奮気味な視線が集まっているが――余裕の無い高音も、あまりに自然にソレが出来てしまう士郎に
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