2話
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い男性教員は、決して臆病ではない。心霊現象と区別の付かない“何か“は、結局“説明出来ない(オカルト)“という得体の知れないモノに、生存本能が警笛を鳴らし続け―― 目を反らして「何も無かった」と全てを否定しただけだ。
だから教科書を盾に顔を伏せながらガタガタ震える生徒が居ても、窓辺で空を眺めて現実逃避する生徒が居ても、きっと彼の中では「何も無かった」のだろう。彼の今日の授業は「黒板に向かって、黒板の為に説明する」と云う授業なのだ。
生徒は黒板ヒトリ。なべて世はこともなし。
――キーンコーンカーンコーン……――
授業終了の鐘の音。脊髄反射的なタイミングで、起立と号令する学級委員長。良く訓練された軍隊のように一糸乱れぬ直立を見せた級友達。
今、この場この時だけは――
鐘音が途絶えてから一分もしない廊下に高音がいる。
授業終了の号令と同時に教室を後にしていた。急いで昼食を確保せねば、と早足で学食へ向かう。
しかし、廊下は走れない。これは譲れないし、規律を乱すことは許されない。自己の為に他者に迷惑を掛けるなど以っての外。
朝食を抜かざるをえない時間とはいえ、弁当の用意も出来ず、このまま昼食まで抜く羽目になったら泣く。多分泣く。
もし――
――もしもだが、これで財布を忘れたりしたらどうだろう?
「……………ものすごく、嫌な予感が――」
そういえば、朝は急いでいた。
私はそもそも寄り道もしないし、学食も使わない。必要なモノは前夜に用意する、が、財布もその中身も昨日は確認していない。
――……ゴクッ……――
冷や汗が出て来た、口の中の感覚なんてもう良く分からない。分からないのに喉が鳴る。
思わず止まって、財布の所在を確かめる。
――……ない……――
無い。意識が前に行き過ぎて、財布の重みも何も全然知覚出来なかった。
いや、そもそも無かったのだから「知覚出来る訳がない」のだが。
「フ、フフフ……」
辺りが曇天の空の様に冥く見える。少しでも明るいモノを見ようと、廊下の窓に身体を向けるも、サッシに手を掛けたまま……落胆は顔を上げさせない。
『あー、可笑しい。なんでしょうか、これ。ここまで来れば、新しいコントか何か……あ、いえ、新しいくはありませんわね』
こと、ここに到っても気が付かないほど、高音は落ち込んでいた。冥い曇天こそ高音自身だと。
落ちた胆力などで、自身を御せるワケもない。ずるずる、と身を崩し、膝を屈してしまうのも致し方ない。
授業の圧迫から解放された生徒たちとは真逆の“何か“がそこに在る。
……在りはする、が。
誰ひとりそこへ近付こうとしないのも、また――頷ける話しでも在った。
水と油は混ざらないのだから。真逆の存在が在ったとす
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