2話
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幾らか早足とは言え、歩みに変えて、再び開けた視界を真正面に向けると――
――見知った校門と、「この状況で」会いたくない人物とを近くに捉えてしまう。
せっかく落ち着けた全てをどこかへかなぐり捨てたかの様に、眉間には皺を、歩調は荒く、怒気でも含ませたかのような視線はその人物へ。
それでも高音は、やはり“優等生“だった。
「おはようございます……“衛宮先生“」
その人物の脇を通り抜ける間際、すれ違い様に挨拶をする。いくら相手が自分の従者とはいえ、“表“では教師と生徒。目上の相手より先に挨拶するのは当然だし、名前を呼び捨てにするなど以っての外だ。……なのだが。
ツン、と撥ねるように視線とは逆向きに鼻先を向ける。別に嫌いなワケでもないが――やはり、“今は“会いたくはなかった。
「おはよう、“グッドマン“。
……ふむ。君ともあろう者が、些か余裕の無い時間帯の登校だな」
――ピクッ――
……“分かってはいた“が、やはり“こう来た“か。
何か一言あるのも、ニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべるのも、全部全部“分かっていた“。――が、それでもやはり、感情も、それに影響する身体も無意識に反応してしまう。
思わず止まってしまうのを、若干の後悔を以て自らに叱責したとして――錆た雨戸の様に、ギギギと擬音でも付きそうな具合に顔を向ける。ついでにその戸板を外して感情すら通してやろう。曰く、「私は不機嫌です」。
腕を組み、口の端を吊り上げたその頭に来る顔に、文句の一つでも言わなければ気が治まらない。そんな気がする。
「……ッ――!」
――キーンコーンカーンコーン……――
辺りの空気を肺に入れ、その何かと一緒に吐き捨てようと口を開いたと同時だった。誰もが良く知る鐘の音により未遂に終わる。
「ほら、どうした。もはや一刻の猶予も無いぞ?」
尚も募る苛立だしさと一緒に言葉も飲み込む。確かに猶予は無い。
二度目の「ツン」を無意識にしながら、不機嫌さを両足への動力にして校舎へ向かう。
常に前へ。己の理想と矜持を以て前を向く高音。そこに生まれるのは「自信」。そんな高音だからこそ、こんなに余裕の無い表情は珍しい。
そんな珍しい姿は、周りから見れば何とも「美味しい」のだ。普段とは違った姿。そのギャップが他人の妄想に色を付ける。
此処は女子高。異性の交流が少ない咲き誇るのを今か今かと待つ、蕾達の花園だ――
遅刻は辛うじて回避された、睡魔に屈する事なく午前中の授業も残り一つで乗り切る……が、空腹は限界を超え、疲労も手伝い眩暈すら覚える。
据わった眼にギラついた“何か“を載せ、時計を凝視すること早十数分。
目に見えない“何か“を周囲に撒き散らす高音に、声を掛ける事の出来な
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