1話
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人員を用いた大々的な防衛任務だが――麻帆良学園都市の広大な敷地を防衛するとなると、人員不足はやむを得ない。
時限防衛ではあるが、定刻まで少人数での各拠点防衛はなかなかに厳しい。
この高音、愛衣、士郎の班はそんな厳しい防衛にあっても『修行』を前提にしていたのだ。発案者は高音だ。
士郎は、その広大な射程を使い、他の班のバックアップも兼ねて後方に。高音、愛衣は修行も兼ねて前方に、だ。
だが、目論みより遥かに多い敵の前に、劣勢は否めなかった。
「た、確かに“少々“追い込まれてはいましたが、これから……これからでしたのに!」
『追い込まれた』と言っている時点で、劣勢は否定出来なくはあったが、愛衣には『少々』とは思えない。だが、そんな劣勢にあっても『やる気』に水を差される感じに手助けをされれば――確かに『少々』抗議したくもあった。
「まあ、そう言うな。ほら、じきに防護結界も復元する」
士郎の発言から僅かに間を置き、麻帆良の定期メンテナンス終了と、それに伴う防護結界の復元が始まった。
これで任務が完了したともなれば、肩の荷が下りた、とばかりに脱力するのも仕方ないだろう。愛衣は緊張も解け、その場に座り込んでしまう。
それを見て、尚も抗議しようとした高音も吐息を一つ――上がった眉尻と怒気を下げ、愛衣の傍らに屈み込む。
「お疲れ様、愛衣。良く頑張ったわね」
礼賛を受け、照れた笑顔を向ける後輩に、高音も笑顔で返す。何かをやり遂げた後のこの一時は、どんな状況であっても嬉しいモノであり、喜びは辛い修練や職務に在って何物にも代えられない糧だ。
なら、今回の任務はこの少女達にとって、正しく人生の糧になったに違いない。
それを見届ける大人は士郎。余計な手助けをしてしまってはいたが、定刻まで時間があった為に、増援を危惧して現勢力の殲滅を選択した。
結果から言えば、メンテナンスは定刻より大分早く終了した為に、本当にただ水を差しただけになってしまい、少々申し訳なく思っていたりする。
――だが、それでも――
生来の性か、女性……否、『他人』であれ傷付くのを嫌う彼は、遅かれ早かれ手を出していた可能性は多いにある。高音や愛衣が、もしあの時自身を鼓舞せず弱音を吐こうモノなら迷い無く敵を討ち滅ぼしたに違いない。
ただ『主』の意にそぐわない行動をしたことは、やはり申し訳なくも思う。
少女達の笑顔を見ては、自分の行いも満更間違いでもないのだろうと、いつかの大切な“笑顔“に近付けたのかも知れないと思い、自然体であろうと誰にも気付かれないよう努めた身体を休める。
「……クッ」
「ちょっと! なんですか、その嫌味な笑いは!」
『……』
前々から思ってはいたが、やはり自分はいつしか『普通の』笑顔は作れなくなっていたようだ。
どう
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