1話
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友のように、穿った友情を以てすり潰す。
貴い一粒の宝石のようなソレを、狂った愛情を以て呑み下す。
張り裂けんばかりの動悸を抑え、凶った欲情を以て抱き伏せる。
――嗚呼、堪らなく愛おしい。
こういった手合いとは、そうそう出会えない。“英雄“などと持て囃される輩とは比べモノにならないほど小さいが、それでもこの身に“喜悦“を抱かせた。
その少女達の光輝く瞳が、絶望を宿したとしたら――
「――あかん、猛ってしもうて、抑え切れんわ」
今宵の月と同じ、その口が弧を画く――
恍惚とした表情は、色欲に捕われた蛮族と何が違うでもなかった。
傍らにいる少女「愛衣」に「お姉様」と呼ばれた少女、「高音」は強い意志を持ち得てはいたが、それでも覆らない「事実」を冷静に捉えていた。
『このままでは、私はともかく愛衣が先に落ちてしまう』
秀才と呼ばれる愛衣ではあっても、戦闘経験も、判断力や制御も――容姿に合った程度でしかない。
まだ、幼いのだ、彼女は。
高音自身とて、そう多くの実戦を繰り返したワケではないが、その自分よりさらに少ない愛衣には今の状況がそう長く保てないのが良く分かる。
瞬間的な魔法行使、最大運用は高音と大して変わらないだろう。
だが、戦闘は何も短期で終わる訳でもなく、決闘のようにルールが在る訳でもない。
何時終わるか分からなければ、ペース配分も分からない。なら、序盤で相手を知り、必要分のみを常に放出すれば良い。
だが、愛衣は序盤で広域殲滅を選び、それに漏れた者達にも力を行使した。
戦略的には間違ってはいない、数が多ければ当然の選択だ……が、それはバックアップがあれば成立するのである。
確かに、高音と言う存在はあるが――いや、その存在があるからこそ、無茶をしたのだろう。
『全く、この娘は――』
高音に認めて貰いたく、高音を傷付けたく無く、早急に決着を付
けたいが為に。
しようがない、と小さく吐息すると、不思議と活力が湧く。張りすぎた緊張が、和らぐのが分かる。
かなり減らしたはずの敵が、また少し増えたのを見ても、絶望感は無かった。ただ、ちょっとだけ背中に冷たい汗を感じただけ。
『やってあげます! この程度で、私達は倒れません!』
愛衣は前提を間違えたが、何も相手を下す必要は無い。自らの役目は何だ? 役目は、この「麻帆良学園都市」の警護だ。護る=打倒する、ではない。
なら ――
「――最後まで抑えてみせます!」
残り少ない魔力、それでも己の矜持を以て完遂する。
そこへヒトの声が聞こえた。
『意気込むのは勝手だが、その前に伏せろ』
抑揚の無い平淡な声、それが直接脳裡に響くように聞こえた。
何のことはない、驚くこともない。
この声は知っている。こちらの
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