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魔法少女マギステルたかね!
1話
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 ――夜。
 現代でこそ、深淵の闇と呼べぬ程明るい宙を見上げてはいるが、
この果てを知らぬ暗き宙は昔から“裏“の者達のフィールドだった。
 それは『魔』を冠すモノ達のフィールド。『魔物』『魔法使い』……そういった『表』の者達とは違い、『在る筈が無いモノ』とされた『裏』の者達は、光の強い昼を避ける。
『魔』である以上、人とは違うのだ。相成れぬ者達の諍いを繰り返すよりは始めから世界を分ければ良いのだ、昼に、夜にへと。
 鬱蒼と茂る深緑も、この闇ではより恐怖を煽るだけだ。
 その『魔』達の存在を肯定するかの様に、今この場である闘争が起きていた。
 人と人、近代兵器を使った戦ではなく――
 人と異形、魔法と武術の争い。
「……もうっ! こう数が多くては!」
 複数の異形を相手取る人は、幾分か大人びた感じはあるが、まだ少女と呼ぶに相応しい。
 闇夜に融けるかのような『影』を人型のように操り、自らも闇色の光弾を撃ち、異形の数を少しずつ減らして行く。
 強くもない下弦の月光を受けて、清涼な川面のように宙に舞うのは金と見間違う美しく長い髪。黒を基調とした修道服に似た衣服は、闇に在って純白の襟がCalla−Lilyを想わせる程に清楚に揺れる。
 意志の強さが見てとれる顔容、その瞳は異形達を一つ残らず捕ら
えんと眼前を見据える。
「お、お姉様。魔力が持ちませんーっ!」
 背後では、幾分か幼い少女が悲痛な声で訴える。
「何を泣き言を言ってるのです、愛衣!」
 愛衣と呼ばれた少女は、涙目になりながらも「はい! お姉様!」と健気に応える。
 お姉様、と呼ばれた少女もまた、愛衣の奮闘する姿に鼓舞され、
自らに宿る“魔“を駆る。


 予想以上に奮迅する少女達に、異形は攻めあぐねていた。
 疲れも見てとれる。力の枯渇も見てとれる。明ら様な失速、精彩を欠く動き――
 異形から見れば、死に体と何ら変わらない。
 だが――

 ――その瞳に宿す意志は、陰るどころか猛っている。
 もう、数刻も持つまい。制圧は目前だ。
 それでも――

  ――異形、人々の「悪しき幻想」で綴られた「恐怖」は――
  ――その「ヒト」に、ある種の「恐怖」を抱いてしまっていた。
「笑えんなぁ。ワシら“鬼“が為体、おぼこい嬢ちゃんらに、これかいな」
 異形「鬼」の独白。笑えない、と言ってはいるが――その唇は盛大な弧を画く。
 恐怖は、幻想に生きる魔の者達、その中でも鬼や悪魔にとっては身近なモノだ。その“感情(きょうふ)“こそ糧なのだから。
 そして、それは他者から得るモノであり――自らの裡より出るモノではない。
 故に、この恐怖はどう処理すべきか知らず――この恐怖を抱かせる「ヒト」を溢れんばかりの情を以て対するのだ。

 待ち焦がれた生涯の
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