憎悪との対峙
23 空白の日々
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ウヤも僕と同じで彼女を妹のように思っていたみたいだ。でもね、そんな幸せな日々も長くは続かなかった」
彩斗は来ていた黒のTシャツを脱ぎ、水色のワイシャツを着た。
そして青いGパンを穿いた。
「4年前の4月...彼女がかくれんぼ中に消えた。文字通り、跡形もなく」
「え?」
「彼女は実験中の立入禁止ブロックに近づいていたんだ。施設の先生たちの言う通り、中には入っていなかった。でもそこで行っていた実験の余波は予想を上回り、彼女を飲み込んだ」
「...それってまさか...」
「確かアメロッパ軍が開発していたコードネーム『スペクトル』というテクノロジーだった。現実空間の物体を電子データ化するという技術だよ」
「....」
アイリスはこの研究に心当たりがあった。
自分の出身地で行われていた悪魔のような実験だったからだ。
「彼女はそれに巻き込まれ、電子データ化したんだ。でも当時の技術は完璧じゃない。人間なんてデータにしたら膨大だ。それが100%、完全な形でデータ化されることはない。バラバラであらゆるデータが破損、使いものにならない状態だった」
「じゃあ...どうして」
「抜け落ちていたのは人間を形作るDNAフラグメントの一部だった。僕とキョウヤは悩んだ。他の部位のデータはある程度プログラムで修復できたけど、DNAとなるとプログラムで解決できるものじゃない。そこでキョウヤはこう言った。『オレかお前のどっちかのDNAフラグメントで補うしかない』ってね」
「....」
「キョウヤはそう言いつつも自分のDNAを使うように言った。当時、パソコンの知識があったのは僕の方で修復も僕しか出来なかった。だからキョウヤも...僕がキョウヤのDNAを使ってヒナを助けたつもりだったろうね」
「でも...あなたはそうしなかった」
「ヒナがキョウヤに取られてしまうようで...僕からヒナが遠ざかっていくようで...僕は自分のDNAを使ってヒナを修復した。これによって...ヒナは本当の意味で僕と同じ遺伝子の一部を持つ”妹”として蘇った」
「....メリーさんのこと...好きだったんだ」
「...うん。だけど罪悪感でいっぱいだった。ヒナだって望んでいなかっただろうし、キョウヤを騙した。その罰が当たったんだろうね、ヒナは僕のことをよく覚えていてくれなかった....記憶データも完全には戻らなかった」
「.....」
彩斗はアイリスに背を向けた状態でノースリーブのパーカーを来た。
声も少し涙声になっている。
「でも僕の名前と誰なのかを忘れても、懐いてくれていたこと、僕が彼女を妹のように思っていたことだけは覚えていてくれた。それでも僕には辛い現実だったよ」
「それがきっかけでメリーさんが力を使えるように?」
「そう、皮肉だよね。それもその
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