一人目。〈恐怖と違和感〉
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ここはお前のようなガキがのこのこと来るところじゃない。」
「ふうん、優しいねお兄さん。流石それだけ背が大きいことはあるね。身長の大きいさに比例して心の器の大きさも決まっていると思うんだよね。実際、俺なんてものすごっく捻くれているわけだしさ。」
こう見えても、二十二なんだよ、と衒は呟いて目の前にいる190cmを近い長身の男を相変わらずの笑みで見上げる。
「……ちっ!全く気持ち悪い笑みを浮かべる野郎だな。いい加減に失せないと潰すぞ。」
「男性器を?」
「何で男性器限定なんだよ!?そんなことしねぇよ、流石に外道が過ぎるだろうが!」
「ですよね〜。」
凄みを掛けても全く態度変えず、寧ろ毒気が抜かれるような受け答えで調子が狂わされた男はもう一度舌打ちをしてから、衒のことを鋭い目つきで睨む。
「これが最後だ。ここから先は関係者以外は立ち入り禁止だ、これ以上うだうだ言い続けるつもりなら二度と朝日を拝めない体にしてここから追い出す。」
「そうかい。わかったよ。お兄さん。」
どすを聞かせた深く低い声で最終警告を男が言うと、衒にも流石に男が本気で伝えていることが分かったのかあっさりと問答を止めた。
ニコニコとした笑みも抑えて真剣な目つきに変わり、右手で口を抑えて考え込んだ。
まるで別人のように雰囲気が変わった衒を見て、男は面を食らって思わず茫然とした。
なんせかれこれ二十分ほど衒と問答を続けていたのである。
その間に一度たりともニコニコとした笑みを衒が絶やさなかったし、言いくるめて通り抜けようとする衒を咎めても捻くれた答えで流されていたのだ。
この変わりようには衒のことをほとんど知らない男ではあるが、拍子抜けというか違和感というか、奇しくも出し抜かれたかのように完全に先ほどまで溜まっていたイライラや殺意などがすかされてしまった。
やはり調子が狂う。男は改めて衒のことをそう認識した。
「うんうん、お兄さんも仕事かなんかでここにいるわけでしょう?だったら、いつまでもここに居続けるわけにもいかないか。あんまり人に迷惑をかけるのは好きじゃないし。俺が物心つく前に死んだお祖母ちゃんがそんなことをいっていたかもしれないしな。」
「絶対に言ってねぇよ、それ。」
「仕事は邪魔しちゃいけない。これはある意味真理だよね。」
「いや、別に仕事をしているわけじゃねぇがな。」
「あれ、仕事じゃないの?」
「少なくとも本業じゃない。こんな事はもっと下っ端の奴に任せる者だろうに。あの腐れビッチめ。」
「ふうん、でも任されたなら仕事じゃないの。」
「拒否ができない仕事は労働というよりは義務みたいなもんだろ。」
「確かにね。お兄さんも中々に大変だね。」
労いの言葉掛けられ、何故か同情をさせられる。
見ず知らずの奴がそんなことをしたのだか
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