空白期 第3話 「王さまは家庭的」
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群がりすぎて彼女の姿が見えなくなったり……。
「では貴様のを借りよう」
「俺のでいいのか?」
「うむ……貴様やレーネ殿にシュテルのエプロンを着ている姿を見られると思うと恥ずかしいからな」
「何をぼそぼそ言ってるんだ?」
「何でもないわ!」
ディアーチェはさっさと貸せ、と続けて俺からエプロンを奪い取った。素早くエプロンを身に着けた彼女はキッチンへと向かっていく。
……何で俺は怒鳴られたのだろうか。単純に考えて聞き返したのが怒鳴られた原因なのだろうが、エプロンの話をしていただけのはずだ。
ディアーチェはいったい何を呟いたのだろうか……、と考えながらふと視線を落とす。そこにあるのは猫の絵柄の入ったエプロン。これを着て手伝いだけでもしようかと思ったが、自分が着ている姿を想像したら恥ずかしくなった。
普段から猫好きを公言していたり、性別が女だったら抵抗はないのだろうが……よくシュテルはこれを着ていたよな。ばっちり着こなしていたから疑問にすら思ったこともなかったけど。ディアーチェが俺のを選んだのは、意外と同じ理由なのかもしれない。
イスに座って待とうとしたのだが、普段料理をしているせいか落ち着かない。そのため手伝いを申し出たのだがディアーチェには不要だと言われたため、大人しく待つことにするしかなかった。
ディアーチェが料理をしている間、俺は暇つぶしにはやてから借りていたが、事件やらで読めていなかった本を消化することにした。いつの間にか彼女の存在を忘れるほど熱中していたが、ふと食欲をそそる匂いに我へと返される。
それとほぼ同時に扉が開く音が聞こえた。その直後に何かがぶつかる音がしたが気にしない。キッチンのほうからした音は気になるが、すぐに作業に戻ったようなので怪我はしていないと思われる。ここは大人しくしていればいいはずだ。
「……ショウ、君が座っているというのは違和感があるね」
「一般の家庭ではそれが普通なんだよ……まあ俺も落ち着かないけど。でもディアーチェに座ってろって言われたから」
「ふむ……君も尻に敷かれるのだな」
その言葉は一般的に夫婦間で使われる言葉ではないのだろうか。
俺とディアーチェは無論夫婦ではなく、恋人ですらない。友達と呼べるかどうかすら微妙だ。返す言葉に迷っていると、それをスルーと思ったのかレーネさんは続ける。
「君のそういうところは実に可愛げがない……まあそんな君も好きといえば好きなのだがね。おや? 何だか顔が赤いようだが……」
ディアーチェがいるのだから好きなどと言われれば恥ずかしく感じるのは当然だ。それに、あまり叔母から好きだと言われた覚えがない。頭を撫でたり、とそちらの愛情表現はしていたが、何というかこの手の愛情表現には不慣れだ。赤くもなるだろう。
「ディア
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