空白期 第3話 「王さまは家庭的」
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見れば分かる。心配無用だ」
そういえばシュテルも一度見ただけで大半の道具の場所を把握していた気がする。前にシュテルから聞いた話だが、彼女とその友人は小さい頃からレーネさんに色々と教わっていたらしい。これが意味するのは知能が高かったということ。
つまりディアーチェは今言ったように一度で道具の場所は把握してしまう可能性が充分にある。
それに揺るがない自信に満ちた瞳と言葉。本の虫だったシュテルを変えたのも納得できるカリスマ性のようなものを感じる。
加えて、ディアーチェは久しぶりにレーネさんに会ったのだ。純粋に自分の手料理を食べてもらいたいのかもしれない。
そのように思った俺は、ディアーチェの提案を受け入れる返事をする。
「うむ、腕によりをかけて作るから心待ちにしておるがよい」
ディアーチェはヘアゴムを取り出して口に咥えると、両手で髪を束ね始める。出会ったばかりのはずなのだが、ポニーテールの彼女は新鮮に見える。はやてに似ているのが原因かもしれない。
「ん? 我の顔に何か付いておるか?」
「髪結ぶんだと思って」
「あぁ……まあ別に結ばなくともよいのだが、料理などのときはいつもこうだからな。ある意味癖みたいなものよ。始める前にいくつか聞いておきたいことがあるのだが」
「何?」
「使ってはならぬ食材はあるか?」
「いや、好きなものを使ってくれていいよ」
「了解した……エプロンを貸してもらってよいか?」
「どうぞ」
と言っても、ディアーチェはどこにエプロンがあるか分からないだろう。道具は自分で確認するだろうが、エプロンくらいは俺が取ろうと思い、先にキッチンへと向かう。
……どっちを渡したらいいだろうか。
うちにはエプロンがふたつある。ひとつは黒を基調としたもので普段俺が使っているもの。もうひとつは、シュテルが使っていた猫の絵柄が入ったもの。ディアーチェの性格上、人前で後者を着なさそうである。だが俺かシュテルかでいえば、シュテルの物の方が身に着けるのに抵抗は少ないだろう。
「どうした?」
「いや……どっち使う?」
「どっちでもよいが……貴様、猫好きだったのか。少々意外だな」
「いや猫の方はシュテルのだから」
「なるほど、あやつのか」
シュテルにぴったりだ、といったようにディアーチェは納得している。おそらくシュテルの体質が関係しているのだろう。
シュテルからは全く敵意が発せられていないのか、はたまた何かしら発せられているからなのか、彼女には猫が寄ってくるのだ。数匹ならばまだしも場合によっては数が2桁に達してしまうため、何度か驚かされたことがある。
月村の家には多くの猫がいると聞いたことがあるが、シュテルを連れて行ったら大変なことになるのではないだろうか。例えば、シュテルに猫が
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