7 「『ただいま』」
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宅と同じように赤い装飾が施されていた。横には驚いたことにデュラク用の小屋もある。翼を広げることはできないものの、十分竜が寝転がれる大きさの小屋である。
「よくお戻りくださいました。彼女たちのこと、許してくださいましね。ギルドの方から速達が届いたときは、3人とも卒倒しそうな顔でしたのよ」
「はい、分かってます」
苦笑と共に村長に礼をする。飛行船に乗っている間はほとんどベッドで過ごしていたが、やはり少しは疲れがあるらしい。熱もすっかり下がったとはいえ、体にだるさはまだ残っていた。たまに思い出したように響く鈍い頭痛も相まって、眠ることに苦労はしなそうだ。
「ナギ――――!! 明日、9時に広場に来なさいよ――!」
「はいはい」
「聞こえてるぅ―――!?」
「わーかったって!」
「よろしい―――! ……忘れんじゃないわよ―――!」
だんだん寝るのが怖くなってきた。頭の上ではさっきからルイーズが凪が居ない間のことをずっとしゃべっているが、最後まで聞いていられそうにない。
赤いのれんをくぐりながらメラルーの長話に適当に相槌を打つ。と、背後から少女たちが異口同音に叫んだ。
「おかえりなさ―――い!!」
「……ただいま」
(ああ、なんかこういうのって……いいな)
悪くない寝心地のベッドとルイーズの陽だまりの匂いに包まれて、目を閉じる。まだ日は沈み切っていない村のざわめきは凪の心を癒した。
なんだか、“帰ってきた”実感がわいて来る。
予想より早く引っ越しが終わっていたのには驚いたが、この村ならば大丈夫なのかもしれない。彼女たちならば。ルイーズもきっとそう思ったのだろう。
「……ルイーズ」
「うにゃ。大丈夫ニャ、旦那。リーゼもエリザもユッキーも、みんニャいい子ニャ。ほんとに旦那のことが好きニャ子達ニャ。旦那にどんニャ過去があっても、笑い飛ばしてくるニャ」
「……そうかな」
「うにゃうにゃ」
「……笑い飛ばされるのは、ちょっと、嫌だなあ」
「うにゃうにゃ。その意気だニャ。さて、ニャアは寝るニャ。明日はベーコンエッグが食べたいニャ」
「はいはい。お休み、ルイーズ。…ありがとな」
もごもごと返事をするころにはメラルーは既に夢の国へと旅立っていた。聞きなれた風の音に、デュラクが帰ってきたことを知る。迅竜が慎重に一歩を踏み出すごとに僅かに揺れる家に、思わず笑ってしまった。
(やっぱりこいつらの傍は、安心する)
穏やかな心地で、凪は眠りについた。
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