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Monster Hunter ―残影の竜騎士―
7 「『ただいま』」
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は蘇生されたのか。

 この味蕾破壊兵器が作られたあとの厨房の惨劇の跡と、医務室へ運ばれた哀れなコック見習いの症状を重く見たコック長が、胃に優しいハーブをふんだんに使った料理を凪の口に詰め込んでくれたのだった。
 彼は後にこんな言葉を残したという。

『あと3分、いや1分遅かったら、彼の命は危うかったでしょう。自分はこの稀有な才を持つハンターを、理不尽な死神の鎌から救うために生を受けたのかもしれません』






******







 朱い空。沈む夕日。黄金に輝く陽に照らされて、より紅く風に遊ぶ、湯気に濡れたユクモのもみじ。
 全てが金に染まる世界の中で、赤金と藍と白い髪が、風になびいた。

「……これはこれは。凪、少し見ないうちに随分と人気者になったんですねえ」
「冗談はよしてくださいよ、って、言いたいところなんですが…。いや、自分でも予想外というか…なんつーか……」
「まったく。私たちが一体どんな思いで貴方達の帰りを待っていたと思ってるんです? どれほど皆さんに心配をおかけしたのか、分かって無い御様子ね。……何か言う言葉は?」

 呆れた風に腰に手をやり、大げさに溜息をつく。そんな真砂の求める言葉が、一瞬何か分からなかった凪は、しかしすぐに「あっ」と照れくさそうな笑みをこぼした。

「ええと…ただいま戻りました」
「よろしい。……おかえりなさい、凪」

ピアェィイ―――!!

「旦那ぁぁぁ!!」

 頭上から降ってきた相棒の声と猫の着地する衝撃に、相変わらず騒々しいと苦笑いする。その騒々しさが懐かしくて、無意識にメラルーの頭をぐりぐりと撫でた。だいぶ狭い村での飛行に慣れてきたデュラクは、嬉しそうに上空を旋回している。その背に乗せているのは村の子供たち。この1ヵ月の間で、凪が思っている以上に迅竜はユクモ村に受け入れられたようだった。
 同じく真砂にあいさつをしている双子と菖蒲を視界の端におきながら、凪は腰にへばりついて離れない弟子と義妹の頭を撫でた。

「ただいま」
「…ッ。遅い!!」
「シャンテちゃんから凍土でネブラが大量発生してるって聞いた時のわたし達の心中、察してください!!」
「お兄様、御無事で……ッ!! 怪我は!?」

 堰を切ったように喋りだした少女達は一通り喋り尽くすと感極まったように号泣しはじめた。周りの村民たちも苦笑する大騒ぎぶりに、ナギの方がわたわたと動揺する。
 ぐずぐずと目尻に溜まった涙を拭きながら、雪路が兄に話しかけた。その目には何か必死さがうかがえる。

「いいですかお兄様…ぐすっ…私は…私たちはですねえ…ぐすっ…すっごく…すっごく心配…ぐすっ…したんです……!!」
「……はい」
「だからですね…ぐすっ…お兄様は私たちに…
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