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Monster Hunter ―残影の竜騎士―
7 「『ただいま』」
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フリントポウク改の柄に手を伸ばす。慣れ親しんだ持ち手をくいっと引っ張り出して構えるは、自分も戦うという意志の表れ。頑固な妹は、もう梃子でも動きそうにない。

「僕たちが注意を引きつけるので、兄さんがトドメを刺してください……って、言おうと思ってたんですけど……あの、やっぱり……」
「いや、俺がやる。ひやひやしながら見てるのは真っ平なんでね。お前たち、そもそも同時狩猟をした経験なんて無いでしょ。それでいきなりネブラというのは厳しすぎる」

幸い、あの追いかけっこで俺はやつらの行動パターンは覚えてられたしね。

 息を詰めて早口に、絞り出すように紡がれた最後の言葉。凪は何かを隠すようにうつむいた。
 それに気づかず唇を噛んだ双子は、「それでもっ」と拳を強く握った。ついで口を開けた岬は、その声変わりの来ていない声帯を震わすことなく口を閉じる。

 爆音が凍土に響き渡った。

「おいコラ、何揉めてやがる! (やっこ)さんのお目覚めだバカヤロウ! 悪いが俺ァ逃げるからな!!」

置き土産だ食らいやがれ畜生ッ

 菖蒲はギギネブラの耳が聞こえないのをいいことに―――聞こえたとしても人語を解すわけではないので問題ないのだが―――散々罵詈雑言を言った末、石を包んだ雪玉を樽爆弾へと投げつけた。見事なフォームで地面と平行に投げられた雪玉は見事に樽のど真ん中にぶち当たり、全部で3つある大タル爆弾を誘爆することに成功する。

「ええ是非ともそうしてください!」

 爆音で聞こえたかどうか。凪は足元に置いていた太刀を拾い、双子がアクションを起こす間もなく疾風のごとく駆けだすやいなや、愛刀を向かって右―――不快な目覚めとともにその原因たる矮小な人間を踏みつぶさんとしたギギネブラの尻尾へ投げつけた。
 ブーメランのように回転して飛ぶ銀色の残像に、思わず岬と汀が悲鳴じみた声を上げる。

「まずい!」

 疲労した凪の右腕が手先を滑らせてしまったことなど、火を見るよりも明らかだった。大いに舌打ちをしながら、手から離れた愛刀【銀】に強く祈る。

 この刃が竜を足止めしなくては、菖蒲の命は容易く消える。

(頼む、【銀】―――当たれ(・・・)!!)

 そのとき、岬は見た。
 刀の柄が当たってもおかしくない飛び方をした太刀の、研ぎ澄まされたその刃が、吸い込まれるようにして竜の尾に突き刺さる光景を。

 そのとき、菖蒲は見た。
 爆音に目覚めたもう一頭の飛竜が、視界の端で何かから逃げるように後方へ飛びずさった光景を。

 そのとき、汀は感じた。

―――何か、名も()らぬ、されど大いなる絶対的存在感の顕現を。

パリィィン!!

 硝子の割れる音と共に、飛竜刀はネブラの尾に咲いていた白蓮を砕き散らした
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