暁 〜小説投稿サイト〜
打球は快音響かせて
高校2年
第三十八話 理想的?
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

言わなくても、2人にとっては答えは一つだけだった。




ーーーーーーーーーーーーーーー


<1回の表、三龍高校の攻撃は、1番、セカンド、渡辺君>

今日の試合、先攻は三龍。
主将の渡辺が攻め順決めのジャンケンに負けてしまったからだが、先攻なら先攻で、どんどん攻めていこうと渡辺は意気込む。

「バッター主将ー!初回からいくぞーっ!」

三龍アルプスで応援団長・牧野が気合いを入れ、太鼓を叩く2年生のベンチ外部員がバチを振りかぶった。

ドンドドンドン!
「「「わたなべ!」」」
ドンドドンドン!
「「「わたなべ!
ぅぉーーーっ
わったっなべ!!」」」

吹奏楽部が「Bring on nutty stomper run」を演奏し、全校生徒の声援がトップバッターの渡辺に注がれた。

パラパパッパッパッパッパッパパラララ
パーパーパパーパ♪
「「「そーれわたなべ!」」」



(……よーし、テンション上がってきたばい!)

渡辺がブンブンと素振りをしながら打席に入る。州大会の直前、吹奏楽部の応援が来ると聞いて渡辺は今流れている曲をリクエストした。好きなプロ野球選手の応援歌で、打席で聞く度にテンションが上がる。だからかどうかは分からないが、州大会初戦では4打数4安打の大当たり。秋季大会の通算打率を4割に乗せ、コールド勝ちのチームを引っ張った。

(……浅海先生を甲子園に連れていったる)

渡辺がバットを構え、顎を引いて睨みつけたその視線の先には今日の南学の先発・安里。初戦は登板が無かった、背番号“3”をつけた野手兼任の投手である。安里はランナー無しでもセットポジションから、ずんぐりとした体を若干沈めてサイドスローから投げ込んだ。
試合開始のサイレンと共に投げ込まれる初球は変化球。渡辺は積極果敢に打って出た。

カーン!

甲高いバットの音。打球はライナーとなってファーストの頭上を越え、ライト線を点々と転がっていった。



ーーーーーーーーーーーーーーー


一塁ベース上で渡辺がガッツポーズ。
主将のいきなりの“サイレンヒット”に、三龍ベンチ、そしてアルプススタンドが大きく湧き上がる。

(……そんなに甘い球と違ったんやが……やっぱおじいちゃんが言うだけあってええバッターやの)

打たれた安里はマウンドで大きく息をつき、ドンマイと声をかける野手陣に笑顔を見せた。

(……明らかにライト線長打コースの打球だったのに、ライトが打球に追いつくのが異様に早かった。外野手のポジショニングがやたらと大胆なんだよな、このチームは。やはりどこか不気味だ。)

いきなりのチャンスを喜ぶ選手達とは対照に、指揮をとる浅海の表情はどこか固いままだ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ