忘れ物なんて二度としない
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ある土曜日のこと。
「午前の練習はここまでよ!午後は13時から、メニューに変更はないわ!じゃ、お昼ね!」
カントクの一言により、部員はぞろぞろと体育館を後にする。今から1時間程度、各自休憩だ。部室へ戻り、いつものように弁当を取り出そうと鞄に手を入れると、中にはそれらしきものが見当たらなかった。
あぁ、そういえば、前の家よりはるかにふかふかなベッドが気持ちよくて、今朝はつい寝過ごしてしまったんだっけ。それで焦り過ぎて弁当を忘れるとは、午後はもう死を覚悟するしかないですね。
遠い目をしていると、まるで狙ったように携帯が着信を知らせた。発信者を確認すると「真兄さん(母に入れられた)」の文字が。数秒固まっていると、既に昼食を摂り始めている火神君から「おーい黒子、電話早く出ろよ」との声がかかる。仕方なく通話ボタンを押すと、ゲスっぽい声で「よーテツヤ、今日部活午前で終わりかぁ?」と言われた。笑わないでくださいちくしょう。
「わかって言っているんでしょうけど一応言っておきます、そんなわけがないでしょう」
『ふはっ!家に弁当が残ってたからてっきりそうなのかと思ったぜ』
やっぱりというかなんというか、こういう時の花宮さんは正直、心底うざい。しかし今回に限っては自分に過失があったため、反論もできなかった。
「で、用件はそれだけですか。僕を笑うために掛けてきたんですかこのゲス。」
『……お前口悪くなったなぁ、兄ちゃん寂しい』
「9.5割方あなたのせいだということを自覚して下さい気持ち悪い」
『わかって言ってんだよバァカ。まぁこっからが本題なんだけどよ。…さてお前ら、よくこんな狭い部室で一緒に飯食ってられるな」
最後の方は声が二つ重なって聞こえた。え、と思って振り返ろうとした瞬間、主将の「花宮ァァァ!!」という怒声が聞こえて、……本当に、もう、頭痛が痛いです。
「おいおい、いきなりキレんじゃねぇよ」
「ふざけんな!何でお前がこんなとこにいるんだ!何しにきた!」
「別にお前らにゃ用はねぇよ。なぁ、テツヤ」
空気が固まる。やってくれた、この人。だから嫌だったのに、いやわかってやっているのだろうから余計にたちが悪い。ぎぎぎ、という擬音が聞こえるような動きで全員がこちらを向き、説明しろ、と目で訴えられた。とりあえず申し訳ないが無視することに決定、だって僕も聞きたいことがある。
「……結局僕用件を聞いてませんよ。何しに来たんですか」
「さっきのでわかれよバァカ。ほれ、弁当」
「あ、ありがとうございます」
わかんねぇよバァカ、おっとお口が悪い失礼しました。
「……え、弁当、って」
「どういう…関係…?」
「……もしかしてお前、まだ言ってなかったのか」
そりゃあ言いたくありませんでしたよ、
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