お出かけですか、そうですか
[8]前話 [2]次話
花宮家に引っ越して2日目。
今日は僕と花宮さん、互いに部活が休みであったため、息子たちにより仲良くなってもらおうという両親の計らいにより、家に2人きりである。正直あまり嬉しくはなかったが、少しいい発見もあった。
花宮さんは案外読書家であったらしい。家にはそれなりに広さのある書庫があり、ラインナップも自分好みだった。つまり、趣味が合うのだ。家の案内を受けている時に思わず立ち止まったのを察した花宮さんに自由に使用する許可を貰い、思わず顔を綻ばせる。それを見た花宮さんの驚いた顔が少し間抜けだったと内心ほっこりしたのは記憶に新しい。
もう一つ、彼はバスケ以外の場所ではいたって常識人であり、頭の回転も早く、尊敬できる一面を数多く持っていることもわかったのだ。しかしそれについては誠凛と霧崎第一の確執もあるため、認めるのが躊躇われるのだが。
「おいテツヤ」
「え、……はい、なんでしょうか」
慣れないにも程がある。母によると、早く慣れるためにまず呼び方から徹底しましょうね、とのことだ。父も異論はないらしく(ある筈もないが)、にこにこと見守っていた。お互い顔には出なかったが、拒絶反応が起こりかけたのは当たり前の話である。
「俺、これから図書館に行くけど。お前どうする」
「あ、そうなんですか。わかりました、じゃあご飯とか用意しておきますね」
「あー、そうじゃねぇって。……チッ、クソ」
一緒に行かねぇかって聞いてんだ。わかれバァカ
とんでもないツンデレである。なんだこのゲス。解り辛いんだ、バァカとは返さなかっただけ褒めて欲しい。きょとんとしていると、金はあるから帰り食って帰るぞ、早く支度しろと急かされる。
「……僕、まだ返事してないんですけど」
「うっせ。いいから行くぞテツヤ」
「はいはい。……真兄さん」
クスクスと笑うと照れ臭そうに頭を掻き回された。ま、この人と兄弟になるのも悪くないか、だなんて思いながら、2人で家を出た。
ちなみに、後から母に聞いて知ったことだが。この時、両親は2人でホテルを予約し、そこで家に仕掛けてあったカメラからこの様子を観察していたらしい。発案は父、母は上手いこと言いくるめられたようだ。この父あってのあの子か、と妙に納得してしまった。とりあえず花宮さんには母に本性見られましたよ、と伝え(数秒固まっていた)、また暫くは絶対にお父さんだなんて呼んでやらないと堅く誓った。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ