参ノ巻
死んでたまるかぁ!
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たって思ったより力あるわね〜」
ぶつけた腰も、突き飛ばされたお腹もじんじん痛んだけれど、抹が気にしないように、あたしはあえて冗談っぽくへらりと笑った。
「あ、すみ、すみません、尼君様」
見上げた抹は、熟れすぎた鬼灯のようにそりゃあもう真っ赤だった。その声もふるふると震えている。過剰な反応にこっちがびっくりしちゃうけど、抹は本当に温室育ちなのね。惟伎高に抱きしめられてこの反応なら納得できるけど、同性のあたしにすらこれってことは、当然今まで恋人なんて居なかったんだろうな〜。
「尼君様、な、なに、いきなり、なに、なにを・・・」
「あんたって好いたオトコとかいないの?」
「好いた、男!?そんなもの、出来よう筈がございません!」
抹は悲鳴のように叫んだ。
「それにしても大袈裟ね。ちょっとこっちおいで」
あたしは抹に向かって手を差し伸べたけれど、抹はびくりと一歩下がってしまった。
「こら。何にもしないから、おいで?」
「・・・本当ですか?」
「ホントホント」
あたしは立ち上がってじり・・・と抹に近づいた。
抹は両腕で自分を守るように抱きしめながらざりざりと後退している。
「ちょっと!何にもしないって言ってるでしょ!なんで逃げるのよ!」
「尼君様、絶対になにかするおつもりでしょう!?」
「・・・あんたねぇ、どんだけ大事にされてたかは知らないけれど、あたし相手にこんなんじゃ、婚姻の時ひっくりかえるわよ!そうだ、わかった。今日は一緒に湯堂に行くわよ。都合良くここは寺だしね!あんたそれで少しぐらい他人に慣れなさいよ!」
寺には禊の延長で湯に入れる湯堂というところがある。普通の農民じゃ毎日お風呂になんて入れやしないんだけれど、施浴と言って普段は坊さん尼さんが使っている湯堂をみんなに開放して、綺麗になってもらって、流行病を少しでも防ごう軽くしようとお寺さんは頑張っているのだ。そんな湯堂が、きっと石山寺にもあるはず。
「ゆ、ど、う・・・!?私が、尼君様と一緒に・・・!?」
この世の終わりとばかりにそう叫んだかと思うと、ふらりと抹の身が傾いだ。慌てて駆け寄って抱き留めると気を失っているようだった。ええー!?純粋すぎるでしょ、本当に!
「おい。何をやかましく騒いでェる」
あきれ果てた声がして、惟伎高が入ってきた。
「一緒に騒げるぐらい仲良くなったのなら喜ばしいがァな」
「仲良くなろうと思って一緒に湯堂に行こうって言った
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