暁 〜小説投稿サイト〜
戦国御伽草子
参ノ巻
死んでたまるかぁ!

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「尼君様・・・ご迷惑をおかけして、申し訳ありません」



「ん?なぁに言ってんの。迷惑なんて何もかけられてないわよ」



「ありがとうございます・・・」



 力ない声が気になって、あたしは抹に向き直った。



「ねぇ、どうして出家なんてしたいの?そんなに若くて綺麗なのに」



「・・・綺麗、ですか?」



 惟伎高の態度は置いておいて、確かに抹は本当に綺麗な顔立ちをしているのだった。



 あたしがそう言うと、何故か抹は考えもしなかったことを言われたかのように、ぽかんとあたしを見た。



「うん。綺麗じゃない、抹」



 重ねてそう言うと、抹は一瞬の空白をおいて、ぼっと赤くなった。



「そ、そんな尼君様、やめてくださいませ、そのようなご冗談・・・」



「冗談じゃないってば。いき・・・庵儒もあんたにデレーってしてたじゃないの」



「しておりません!それに、庵儒様は私などよりも、尼君様の方に心を許しておられるようにお見受け致しました」



「ええー?そんな事無いよ。でも庵儒じゃなくたって、あんたみたいな美人に頼られて、イヤな気がする男居ないと思うけれど」



「そのようなこと、ございません・・・きっと、庵儒様は・・・いえ」



「なにー」



「いいえ。・・・綺麗と言われたのは生まれて初めてだったので・・・」



「うっそ!?」



 どんな箱入り娘よ!?



「あんた、どこの家の出?言葉遣いも丁寧だし、それなりの教育を受けた公家(くげ)か武家の出じゃない?」



「・・・さぁ、どうだったのでしょうか。もう覚えておりません」



 抹は曖昧に笑った。



 ありゃ、悪いこと聞いちゃったかな・・・。



 抹が本当に自分の家を忘れている訳ではないのだ。きっと、否定したくなるような辛いことがその家であったのだろう。



 でもあたしはあえて突っ込んだ。



「ねぇ、どうして出家なんてしようと思ったの?よかったら話聞くし、協力もするよ?そんな若いのに出家なんて早まっちゃだめだよ。還俗はお金かかるし」



 先日惟伎高に言われたことの受け売りみたいだけれど、あたしは熱心に言い募った。すると、抹がくすりと笑ったのだ。



 何がおかしかったのかわからないけれど、とりあえずずっと死にそうな顔をしていた抹が含み無く笑ったことにあたしは安堵して、むつかしい顔で続けた。



「あんた笑うともっと美人よ。笑ってなさいよ」



 すると抹の笑顔がぴたりと凍り、今度はばらばらと涙をこぼし
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