参ノ巻
死んでたまるかぁ!
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めて然るべきだ。
「しかし抹殿、お身体を治される方が先決です。焦らずとも仏は逃げますまい。故にそのお話は元気になられてからまた致しましょう」
惟伎高は優しくそう続けた。
抹は一瞬不安そうな顔を惟伎高に向けた。一刻も早く剃髪したいとその顔が言って居た。何があったんだろう。こんな美人が。変態親父に嫁げとでも言われたんだろうか。
「ここは天下の石山寺です。ここにおられれば、何人たりともあなたを傷つけることはできません。わたしを信じて頂けませんか?」
なぁにが天下の石山寺よ。大和国のナントカ寺ってとこに金ヅルみぃ〜んなもってかれたんでしょうが。まぁ確かに・・・名前だけは・・・ムムム・・・有名だけれども。
「そんな、もちろん信じます!」
抹は反射のようにそう言ってから、力なく口を閉じた。そして、肩を落として「庵儒様のお心のままに・・・」と言った。
「では、私はこれで」
「えっ」
惟伎高は用は済んだとばかりすっと立つと、あたしの制止の声も聞かず、きびきびと迷い無く部屋から出て行ってしまった。
なによあいつ!なんかあたしと叉羅抹に対する態度違いすぎない!?
格好つけてるわよねー。格好つけしーよ。抹が美人だからっていいとこ見せようとしちゃってるんじゃないの?
あーやだやだ。これだから男ってヤツは。
いくら一夫多妻制の世だからって、綺麗な人と見るやあっちにふらふらこっちにふらふら。女の子の気持ちなんててんで無視。
女の子がね、黙って耐えてるのは黙認しているからじゃないの。辛い気持ちを他でもない好きな男にわかって欲しいからなのよ。なのに、なんにも言われないのを良いことに側室ばっか増やしてく男ども!父上だってあの浮気性でどれだけ母上達を泣かせたことか。
今の世の常識じゃあ、女は何も口出さず男に黙ってついて行く、ってのが普通。
でも、あたしはそんなの真っ平ゴメンよ。
女に産まれたからって、なぁーんで男に黙って従わなきゃならんのだ。アホらし。毎日毎日、夫にがなりつけられて暮らすのなんて怖気がするわ。
…ここまでくると、なんだか話ずれすぎって気がしないでもないけど。
女だって、もっともっと、胸張って生きて良いはずよ。
「ねぇ、そう思うでしょ、抹!?」
「え?あ、は、はい…」
「あら、ごめんあそばせ。ついね、熱くなっちゃって。あはは…」
あたしが誤魔化すように空笑いしていると、抹がおずおずと声を掛けてきた。
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