それは、この国の行く末です!
[8/8]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
ときー! 夕日が沈んだときー!」
「「どうも、ありがとうございました!」」
「えええっ!? ここまで全部ネタだったの!?」
穂乃果とことりが同時にお辞儀して部屋を去る光景に、真姫は思わず声を荒げてツッコミを入れた。
この日何度目かも分からない静寂が訪れた部室の真ん中で、真姫は大きく溜息をついた。
「まったく……にこのせいで酷い目に遭ったわ」
いきなりメンバーの悩みを聞く役目を押し付けられ、凛からは夕飯のメニュー、絵里からは自身のキャラ、海未からは自身の趣味、そして、花陽からは悩みがないことについて相談を持ち掛けられた――最後の漫才は相談にカウントしないことにする。柄にもないことを延々とやり続けたせいか、真姫は普段の練習以上の疲労を感じていた。
「でも……まあ、皆の意外な一面が見れたし、それはそれでよかったかもね」
しかし、何も悪いことばかりでもなかった。何時ものように一緒にいるだけでは絶対に気付けなかったメンバーの顔を、垣間見ることができたように思える。お世辞にも人当たりのいい方ではない真姫にとって、それは実に新鮮な感覚だった。
「さ、そろそろ帰りましょう。もうすぐ下校時間だし」
白衣を適当なハンガーラックに掛け、鞄を持って部室を出る。
廊下に射し込む西日が、今までよりもずっと優しく、そして、可愛らしく綻んだ真姫の顔を明るく照らし出していた。
穂乃果とことりが部室を出てから数分後、今度はにこが入口の横に立っていた。
静かに一つ大きく呼吸をして、自身の中にある『スイッチ』を切り替える。音ノ木坂学院の矢澤にこではなく、ステージ上に輝く一人のアイドルとしての矢澤にこへと。
準備が調うと、にこはノックもせず勢いよく部室の扉を開ける。
「にっこにっこに〜♪ 次はにこの番にこ♪ えっとぉ、にこの悩みはぁ、可愛すぎること! なぁ〜んてねっ♪」
用意していた台詞を言い切った時、にこは自分の中で何かが冷めていくのを感じた。
それもそのはずだ。なぜなら――
「って、何で誰もいないのよおおおぉぉっ!」
にこの叫びが空しく部室に木霊した。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ