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アイドル研究部の一存
それは、この国の行く末です!
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は誰よ」
 真姫の声でおずおずと扉を開けたのは、同級生の小泉花陽(こいずみはなよ)だった。今日は練習がないこともあってか、コンタクトレンズではなく眼鏡を着けている。
「ああ、花陽。取り敢えず、こっちに来て座りなさいよ」
 μ'sの中でも一二を争う常識人である彼女の来訪に、真姫の声色も自然と穏やかになる。
「う、うん……」
 花陽は顔を俯けたまま真姫の向かい側にある椅子に座る。僅かに見える表情は今にも泣き出してしまいそうなほどであり、余程深刻な悩みがあると窺い知れた。
「どうしたの? 悩みがあるなら、話してみなさい」
 真姫の問い掛けに少し目線を泳がせた後、花陽は意を決したように顔を上げた。
「ごめん、真姫ちゃん!」
「えっ……? ごめんって、一体何が?」
 唐突な謝罪の言葉に、真姫は目をぱちくりさせて頭の中で心当たりを探る。
「ねえ、花陽……私、謝ってもらうことなんて思い当たらないんだけど」
「真姫ちゃんは何も悪くないよ。悪いのは、全部私なんだから」
「いや、そういうことじゃなくて……」
「ごめんね、真姫ちゃん。私……私……悩みごとが思いつかないの!」
「えっと……どういうこと?」
「私、真姫ちゃんに話すような悩みごとなんかなくて……でも、にこちゃんは悩みごと聞いてもらうまで帰っちゃダメって言うし……うう、誰か助けてぇ」
「つまり、悩みがないのが悩みってこと?」
「うん……どうしよう、真姫ちゃん」
「悩みなんて何でもいいのよ。例えば……今日の夕食とか」
「今日はお好み焼き丼にするって……」
「炭水化物に炭水化物乗せてどうするのよ。じゃあ、自分のキャラとかは?」
「お米好きで確立してるし……」
「アイドル好きとかはもういいのね……ニュースとか時事問題でもいいのよ?」
「集団的自衛権は認めるべきだと思うし、憲法も改正でいいと思う」
「荒れる! そういうこと言うと変ないざこざ引き起こすから! そうね……趣味の話にしましょう。野球は観る?」
「今年はホークス絶好調だよね」
「スクフェスはどう?」
「初日に凛ちゃんのUR手に入れたし……」
「艦これは……」
「昨日、初風ドロップしたよ」
「カードゲームとか……」
「この前、髪がツンツンして首から変なペンダントぶら下げてる人と『闇のゲーム』やって勝っちゃった」
 話題を消化し尽くして部室内に沈黙が訪れると、真姫はすうと大きく息を吸った。
「帰ってよし!」
「何だかよく分からないけど、ありがとうございます!」
 慌てて椅子から立ち上がりぺこぺこと頭を下げると、花陽はそそくさと部室をあとにした。
「……あそこまで悩みがないのも考えものね」
 立ち去った相談者にそう感想を漏らした真姫は、残るメンバーに思いを馳せる。
 発起人であるにこを除けば、残って
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