暁 〜小説投稿サイト〜
久遠の神話
第百話 加藤との話その七
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「それまでだったな」
「あれが中田さんの限度ですね」
「ああ、どんな悪い奴でもな」
「相手の命を失わせるまではですか」
「出来ないな」
 真顔で顔を顰めさせてだ、上城に答えた。
「俺はな」
「何でも岩清水という人に糾弾されたそうです」
「岩清水か」
「はい、そうした名前の人に」
 糾弾されてだ、高代は徹底的に追い詰められたというのだ。暫く日本にいられなくなるまでに。
「相当追い詰められたと」
「そいつの名前覚えたよ」
 岩清水という名前をだ、中田は今頭の中に入れた。
「とんでもない奴みたいだな」
「そうみたいですね、そういえば」
「そういえば?」
「うちの学校でもいじめの騒動があって」
「ああ、高等部でな」
 あったとだ、ここで中田も思い出した。
「あったよな、とんでもない騒ぎが」
「確かそのことを言っていた人が岩清水といいました」
「じゃあそいつがあの先生を追い詰めていたのか」
「その人じゃないみたいですけれど」
「親戚か何かか」
「そうかも知れないですね」
 上城は首を傾げさせつつ中田に答えた。
「あくまでひょっとしたらですが」
「そうか」
「はい、まさかと思いますが」
「あのいじめは女の子同士でのことだったよな」
「そうだったみたいですね」
「女の子同士でもいじめがあるからな」
 中田は顔を顰めさせて上城に話した。
「これがな」
「そうみたいですね」
「男同士でも女同士でもあるんだよ、いじめは」
「僕昔女の子はいじめはしないと思ってました」
「女の子は皆優しいってか」
「そう思っていました」
 実際そうした考えだったというのだ、かつての上城は。
「けれど違うんですね」
「ああ、性別関係ないよ」
 中田は顔を顰めさせたまま悟っている目で述べた。
「いじめとかはな」
「そうなんですね」
「人間どうしてもそういう一面があるんだよ」
「自分より弱い人間を虐げる面がですか」
「嗜虐性とかな」
 こうした言葉も出した中田だった。
「あと弱い相手をいじめて自分が強くなっていると思いたいとか」
「他には意地悪とかですか」
「八つ当たりもあるな」
「色々なんですね、いじめる感情は」
「どれにしても碌なものじゃないさ」
 中田は忌々しげに言った。
「あの暴力教師は嗜虐性とか強くなっているとか思いたいからな」
「生徒を虐待していたんですか」
「そういう感情に支配される奴こそ弱者なんだよ」
 きっぱりと言い捨てた、一太刀で斬り捨てた。
「人間としてな」
「腕力があるとかじゃないですね」
「心が弱いんだよ」
 いじめをする人間は、というのだ。
「そうした意味でもなりたくないな、俺は」
「弱い人間にはですね」
「本当の意味で弱い人間になったら終わりだ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ