XY
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
「私、胸を打たれております。この街を愛する、見知らぬどなたかの思いを噛みしめつつ……それでは参りましょう」
「……」
周囲から向けられる奇異の視線にまるで気付いていないエリザベス。
俺自身も普段ならそんなものを気にする性質ではないのだが……
自分じゃなくツレに向けられているのは、しっかり手綱を握っておけよと言われているようで居心地が悪い。
「おや、どうされましたか?」
勝手なことはさせまいとエリザベスの手を握る。
彼女は照れるでも何でもなく純粋に疑問を感じているようだ。
「男と女の二人歩きの作法さ。教えておこうと思ってな」
「……成るほど、これは失礼。今までの私は少々礼に則ってはいなかったようですね」
言葉を額面通りに受け止められ、頬が引き攣るのを止められない。
「しかし、予想通りと言いますか……良い手をしておられるのですね」
「良い手?」
「ええ。無骨でありながらもどこか温かみのある手でございます」
「……体温は低い方だから手も冷たいと思うんだがね」
「手が冷たい方は心が温かい方だと聞きましたが」
何でそんなどうでもいい俗説だけは知っているのだろう。
エリザベスの知識はどこから得ているのか気にならないでもない。
「そのまんまって説もあるがな……それより、昼時だ。何か食べないか? 食べたいものがあるなら案内するが」
「食べたいもの、ですか――――おや、これは……この、かぐわしい香りは、まさか……!」
グイ! っと凄まじい力で手を引かれる。
走り出したエリザベスに引っ張られ連れて来られたのはタコ焼き屋オクトパシー。
「失礼、これはまさか――――」
店主と何やら話しているエリザベスを余所に俺は彼女の細腕を見つめていた。
これでも俺は男だし、そこそこ力だってあると自負している。
だと言うのに女の細腕に抗えなかった。
明らかに筋肉などはないのにどこからあんな力が……疑問は尽きない。
「はあ、驚いたわ……この具のヒミツ、臭いだけで分かるんか?」
店主の言葉で現実に返る。女店主は驚いたようにエリザベスを見つめていた。
「姉ちゃん、伊達にオモロイ格好しとらんな。 ま、タコ焼き屋はタコ以外焼いたらあかんなんて法律はあらへん。」
どや、ちいと買うたってや。ほっぺた落っこちてまうでぇー? カップルみたいやしサービスするでー?」
タコ以外焼いてはいけないと言う法律はない。
ないがタコ焼きと掲げている以上タコを使わないのは虚偽表示では?
そう思いはしたが目を輝かせるエリザベスを見て何も言えなくなる。
「"ほっぺたが落ちる"料理……!」
この空気で無粋なことは言えない。
しかし、比喩表現をそのまんま受け止め
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ