第27局
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が少しおちゃらけた雰囲気のある今風の真柴は、タイプが異なるからこそどこか気が合うのか、当時から良くつるんでいた。
「お久しぶりです。お二人もお元気そうで」
偶然の再会に驚きつつも、岸本はそう声を返した。が、返された二人は微妙そうに顔を見合わせた。
「いやあ、それが二人そろってこの前の若獅子戦、見事に1回戦負けでさぁ。ちょっとへこんでるとこ」
「まだ真柴は勝負になってたからいいじゃないか。オレなんか、見損じで大石取られての投了だからな。ほんとがっくりだ。こんなんじゃ、今度のプロ試験もなぁ…」
そう言いながら落ち込む二人を前にして、岸本の心は軽く澱む。
「そんな事言わずに頑張ってください。応援してますよ」
「ありがとよ!岸本は最近は打ってるの?」
「ええ、今は囲碁部で、一応主将をしています」
「そういや、海王中学だったもんな。有名進学校か、いいよな、勉強できる奴は。俺達みたいな3流高校じゃあ、プロをあきらめたってタカが知れてるしなぁ。俺も岸本みたいにさっさと逃げとけばよかったかな…」
「そんなこというなよ飯島。岸本だって頑張ってるんだって。有名な海王囲碁部の主将なんていかにも大変そうじゃんか。俺にはとても無理だなぁ」
「ま、やるしかないんだけどな。じゃあな、岸本。囲碁部頑張れよ」
「またなっ!」
「…はい。お二人も頑張ってください」
飯島にしても、真柴にしても、何も悪気はなかった。落ち込んでいたところに、顔なじみと会い、ちょっと愚痴を言った程度の認識だ。
だが、言われた側の岸本の心は沈んだ。
道を違えたかつての知り合い達。自分が歩く事がかなわなかった道を歩く、才能を持つ者達。
脳裏に、つい先日出会ったばかりの少年達の顔も思い浮かぶ。自分より年下なのに、はるか上の力を持つ者達。
「…俺は逃げたわけじゃない」
そう思う事が逃げだと、今の彼には気がつけなかった。
この岸本たちの再会は、実は以前の世界では起きていない出来事のひとつだった。もちろん当事者である3人にとっては全く認識できない領域での話であったが。
そして、当然ヒカルにも、こうした出来事が生じている事は把握できていなかった。
最初は小さかった以前の世界とのズレが、ヒカル達の成長に伴い、少しずつ少しずつ、しかし着実に広がっていく。
ヒカルを中心として。当人達の気がつかないところまでも。
ヒカルとのかかわりの有無にかかわらず、様々な人々が小さくない影響を受けていく。
それは受け止め方次第で、当人にとってプラスになり、そしてまたマイナスにもなっていった。
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