第27局
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れはウカウカしていられないなぁー。あたったらお手柔らかにね」
「芦原さん、院生相手に負けたら、緒方さんに何を言われるか分かりませんよ」
話を聞いていたアキラも横から口を出す。慣れ親しんだ芦原が相手だと、アキラの口調も軽い。
言われた芦原はその様子が眼に浮かぶようで、大きくため息をついた。
「確かに…。はぁ、なんか、気が重くなってきた。若獅子戦って、プロにとってある意味一番嫌な棋戦なんだよねぇ。院生とはいえ、アマチュア相手の真剣勝負。院生は負けて元々でがんがん踏み込んでくるから、やたら疲れるんだよなぁ。そのくせ賞金は安いし…」
グチグチと呟く芦原。そう。若獅子戦とは、20歳以下の若手のプロと院生1組上位16名とが参加するトーナメント戦で、1回戦は必ずプロ対院生で組まれる。そうなると必然、プロとしては負けては立場がなくなる。
「まあ、そうは言っても、実際プロ相手にはなかなか勝てないんですけどねぇ。1、2回戦でほとんど院生は消えちゃいますし。私は今年こそ勝ちたいなぁ」
「…まぁ、プロとはいえ入段したばかりじゃ院生トップとほとんど差がないのも多いから、組み合わせ次第じゃ負けるプロもいるんだよねぇ。そんな新人ならともかく、ボクらが負けると、ちょっと立場がねぇ…」
「芦原さん、一緒に頑張りましょうね!でも、どうせなら、ここにいるみんなで出れたら良かったのになぁ。あかりちゃんは院生にならないの?」
「私はまだ、プロのこととか良く分かってないから、もう少し考えてみます」
「そっかぁ、残念。あかりちゃんと、ヒカル君と、塔矢君が院生側で参加したら、すっごい盛り上がるんだろうになぁ」
「…いや、奈瀬さん、そんな怖いことやめようね。院生は盛り上がるだろうけど、プロ側は御通夜状態になりそうだよ…」
奈瀬の言葉に顔色悪く言い返す芦原。今回はそこまでの年長者がいないのもあり、皆、いつしか仲良く会話を交わしていた。
楽しみながらもしっかりと碁の勉強ができる。奈瀬にとって何よりの時間となった。
そして、5月半ばに開催された、若獅子戦の1回戦。奈瀬と芦原は、ともに1回戦で勝利を収めた。
海王中学囲碁部の主将、岸本薫。彼は、行きつけの書店で偶然の再会を果たしていた。
「あれ、岸本、久しぶり。元気にしてたか?」
「え?あ、ほんとだ、岸本だ。いよっ!」
そう言いながら声をかけてきたのは、院生時代の顔なじみの飯島良と真柴充だった。二人はともに岸本よりひとつ年上であり、当時は棋力的にも近かった。そのため、対局も頻繁にあり、院生の頃はよく会話をしていた仲だった。ちょっと神経質そうで線が細く真面目な飯島と、ちょっと気弱だ
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