暁 〜小説投稿サイト〜
打球は快音響かせて
高校2年
第三十七話
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もある。そこそこによう打つってこっちゃ。」

南海学園ナインが宿泊している水面市内のホテルの会議室では、神谷監督が選手を集めてミーティングをしていた。内容はもちろん、次戦の相手、三龍についてである。

「やっぱマークするんは、1番と7番とですか?」
「そうじゃ!1番の渡辺は打てる球を確実に打ってくるけん、最注意よのう。甘く入って二塁以上いかれるんがいちばんいけんぞ。7番の鷹合は、ありゃスイング見たが、えげつない力を持っとる。何で7番に置いとるか分からんが、マトモに当たりゃ飛んでくけ、4番やと思って対処せえ。何も考えず振ってくるけ、ボール球から入れ。」
「「「ハイ!」」」

神谷監督の指示に選手は元気良く頷く。
そこには、監督への厚い信頼が伺えた。

「他のバッターも侮れんバッターばっかりやけ、投手陣は長打にだけは気をつけていけよ。次もしっかり繋いでいくけんな。全員投げる気でおれよ。ええか?」
「ウス。」
「任して下さい」

南学の5人の投手陣は、どれもこれも食えない、不敵な面構えをしている。140キロは投げられない、体の小さな投手ばかりだが、しかし自分の、いや“自分達の”投球に大きな自信を持っている。

「攻撃についてやが、エースの美濃部は体は小さいがスライダーがようキレよるし、球速もチビの割に135は出とる。真っ向勝負でねじ伏せにかかってくるタイプやけ、外のスライダー捨てて、球数増やして三振を減らしていけ。こういう奴ほど、三振が取れんとリズム崩していくけ。」
「まるで宇良みたいやのう」

知花がチームメイトの1人を茶化す。宇良は初戦の最後を締めた投手で、背番号1を背負っている。柔軟な継投策をとる南学においては、背番号1と言えどもけして“エース”ではないが。

「いやいや、俺は今はもうちょい大人やけ、一緒にせんでやぁ」
「確かに。お前言うて135も出んし、スライダーの変化もショボいし、一緒には出来んの」
「うっさいわMAX116キロ!」

鼻白む宇良を更に茶化すのは、背番号17の翁長。
宇良に言い返されたように、球速はべらぼうに遅い。しかし、左のアンダースローという変則投法でキッチリ投手陣の一角を担っている。

コホン、と咳払いを一つ挟み、神谷監督は話の流れを戻す。

「初戦では見んかったけど、2番手には越戸っていう右のサイドがおるらしい。こいつの投げ方がまた、タイミングの取りづらい、けったいな投げ方みたいや。ボール自体も、ストレートでも微妙に変化するらしいわ。ワシとしちゃ、こいつの方が厄介やないかと踏んどる。こういう奴は慣れが1番大事やけ、早めに美濃部を引きずり下ろして、越戸の攻略に時間をかけたいの。ええか?」
「「「ハイ!」」」

今度は野手陣の意気が上がる。
決して強力ではない打線だ
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