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打球は快音響かせて
高校2年
第三十七話
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ンを変えてきている外野手の真正面。南海学園アルプスから大声援が再び送られた。


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「ふぉっふぉっふぉっ、また今日も子どもらは楽しそうやのう」
「いやいや、おじいちゃんの方が楽しそうですよ。でも余裕こかんといて下さいよ、リード一点だけなんですけん」

ベンチで高笑いしている神谷監督を、その隣に座ってスコアをつけている女子マネージャーが諌める。しかし、神谷監督は意に介さず、髭もじゃの顔を引き締めようともしない。

「これが愉快やなくて何じゃい。あの相手の顔を見てみい、イライラしよろ〜?わしゃ相手のああいう顔見るんが好きなんじゃ」
「……性格悪いですね〜」

口ではそう言うが、女子マネージャーも、その顔には神谷監督と同じような笑みが浮かんでいる。

「ほれほれ、かき乱したれかき乱したれ!」
「ウチのチームは全員50m5秒で走るでぇ!」
「アホかお前、それはさすがに盛りすぎやけん!」

ベンチの雰囲気も絶好調。
緊迫した接戦のプレッシャーなど、そこには全く存在しない。心底、楽しそうな少年の姿だけがそこにあった。


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そして、白球が空に舞い上がる。
捕った内野手は、そのまま両手を上げてガッツポーズ。三塁側のアルプスがドッと湧き上がり、試合終了後の整列のタイミングになっても、その喧騒は止まない。

結局スコアは3-2。南海学園が木凪・瑠音地区優勝の勢いそのままに州大会の初戦を突破した。

「……結構、厄介かもな」

同時に、準々決勝で三龍と対戦する事も決まった。東豊緑州の選抜出場枠は4。次の準々決勝は事実上の甲子園出場決定戦となる。その準々決勝は、島民からの大応援に後押しされたチームだ。宮園が顔をしかめたのも無理はない。次の試合、三龍はヒールになる事が明白である。

「でも勝つしかないけ。次の試合だけは。」

美濃部は童顔を引き締める。
次の準々決勝は、野球人生で最も勝ちたい試合になるだろう。
何故なら、勝ちさえすれば。

甲子園。
それが現実になるのだから。




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「昨日までの6試合でチーム打率は.293、長打は二塁打が5本だけ。盗塁数は10個。エラーは3つか。」

乙黒が三龍の寮監室、即ち浅海の部屋にやってきていた。手にとっているのは州大会準々決勝の相手、南海学園のデータ資料だった。指導陣2人でのミーティングである。

「やっぱ生で見た通り、守備走塁中心の渋いチームやなぁ。木瑠(木凪・瑠音地区の略称)の5試合でも、点差は開いて4点。ここ3試合の点差は1、2、1か。接戦をしぶとく勝ってきたって感じか」
「そうだな。タイムリーなしでの得点が8点もあ
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