第百六十一話 紀伊へその六
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「後のことを考えてな」
「ですな、絶対に」
「例え紀伊まで攻め落としても」
それでもだというのだ。
「出来ればじゃ」
「石山もですか」
「何としても攻め落としたい」
例えそれが難しくともだ、だが。
今己の周りにいる者達を見回した、すると疲れが溜まっている。だから信長も今はこう言うしかなかったのだった。
「難しいやもな」
「左様ですか」
「しかし勝三はそれを察してくれたわ」
信長は難しくなっていた顔を一転させて明るく言った。
「このままじゃとな」
「敵を挟み撃ちにして」
「うむ、攻めるぞ」
信長はこう明智に告げてだった、明智自身にはこう告げた。
「この度は御主が先陣となれ」
「それがしがですか」
「そうじゃ、先陣を務めよ」
信長が今率いている全軍のだ。
「よいな」
「そうさせて頂いて宜しいのですか」
「御主は攻めもよい」
織田軍の中でもだというのだ。
「だからじゃ」
「ここはですか」
「そうじゃ、務めてみせよ」
その先陣をだというのである。
「よいな」
「まさかそれがしが先陣rとは」
明智も驚きを隠せない、攻める際の先陣とはこの上ない名誉なことだからだ。
「それを任せて頂けるとは」
「わしはその役目に相応しい者を任じる」
信長は驚きと喜びを隠せない明智に微笑んで告げた。
「だからじゃ」
「それでなのですか」
「そうじゃ、ではよいな」
「わかりました、それでは」
「うむ、ではな」
信長は笑みを浮かべて明智を送り出した、そうしてだった。
織田軍は闇の服の門徒達を挟み撃ちにしようとした、その動きは速かった。
しかしそれは百地も読んでいた、彼は織田軍の動きを見て不敵な笑みを浮かべてそのうえでこう言ったのだった。
「ふん、やはりそう来たか」
「敵はこちらの逃げ道を塞ごうとしてきております」
「紀伊への道を」
「そのうえで囲もうとしてきますが」
「どうされますか」
「今ならまだ間に合う」
こう言ってだった、百地は。
今軍勢にいる者達にだ、こう告げたのだった。
「全速で駆けるぞ」
「そうしてですか」
「そのうえで」
「そうじゃ、逃げるぞ」
紀伊までだというのだ。
「我等の動きの速さをまだ知らぬ様じゃからな」
「だからですか」
「ここはですか」
「一気に紀伊まで逃げて」
「そのうえで」
「後はな」
逃げた後、その後のことも言うのだった。
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