第百六十一話 紀伊へその四
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「それが殿、織田家の御為ならば」
「遠慮せぬか」
「それで叱られればそれまでのこと」
石田はこう割り切っていた。
「しかしそうされてもです」
「御主は諫言を止めぬな」
「そのつもりです」
「その辺りは平手殿と同じじゃな」
平手といえば信長に諫言するのが仕事のところがある、信長は彼の諫言はいつも苦笑いをしながら聞いている。
そしてだ、石田もだというのだ。
「その辺りは」
「そちらもまだです」
「平手殿程ではないか」
「はい、そう思っています」
その諫言もだというのだ。
「それがしの諫言もまだまだです」
「謙遜が強くないか」
「冷静に見てのことのつもりです」
石田自身をというのだ。
「このことは」
「そう言うのならいいがな」
「はい、ですから」
それでだというのだ。
「それがしはまだまだです」
「しかしそれでもじゃあ」
「諫言は続けます」
それは止めないというのだ。
「及ばずながら」
「勇気があるのう」
それもあるとだ、森は石田を褒める。
「御主を得たことも織田家にとって大きいのう」
「有り難きお言葉」
「では御主もわしも他の者もな」
この戦を戦う全ての者がというのだ。
「戦ってな」
「そしてですな」
「生き残ろうぞ」
「是非共」
石田は森のその言葉に頷き自らも戦い続ける、彼は戦においても臆病ではなく堂々とさえして戦っていた。
そして昼過ぎまで戦う、するとだった。
遂にだ、彼等の右手からこれ以上はないまでの歓声が起こった。そうしてそこからだった。
青い旗と具足が姿を現した、しかも。
その数は大軍だった、そこには信長の馬印もあった。
その馬印を見てだ、兵達は一気に活気付いて叫んだ。
「おお、殿じゃ!」
「殿の馬印じゃ!」
「殿が来られたぞ!」
「わし等を助けに来て下さったぞ!」
しかもその左右にはそれぞれ黄色、紫の軍勢も見える。藍色もあった。
「徳川殿もおられる」
「長宗我部家と浅井家の軍勢もじゃ」
「どの方も来られたぞ」
「何と有り難い」
こう言ってだ、彼等は昨日から続いている戦に疲れながらもその援軍に喜びの声を挙げたのである。そうして。
その彼等が法螺貝の音と共に闇の軍勢に向かうとだった、森は彼が率いる全軍に対して強い声で告げた。
「よし、今からじゃ」
「殿の本軍と動きを合わせてですな」
「そのうえで、ですな」
「そうじゃ、攻める」
敵をだ、そうするというのだ。
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