第百六十一話 紀伊へその一
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第百六十一話 紀伊へ
本願寺の闇の軍勢は天王寺砦を中心として守る森が率いる織田軍の先陣と第二陣を攻め続けていた、その勢いはさながら激流だった。
しかし織田軍はその激流に耐えていた、皆真剣に戦っている。
加藤は自ら十字槍を手に戦っている、その中でだった。
家臣の一人がだ、こう彼に言ってきた。
「あの、前に」
「?あの男か」
「あの闇の着流しの者は一体」
「わからぬ、しかしな」
それでもだとだ、加藤はその男が只者ではないと察して言った。
「あ奴は普通ではないな」
「ですな、どう見ても」
「あと二人おるのう」
加藤は槍で闇の者を一人倒しつつ言った。
「どうやらな」
「はい、やけに大きな派手な男とですな」
「あと小柄な男がな」
「その三人ですな」
加藤の家臣はこう主に述べた。
「将は」
「そうじゃな、そして後ろの大軍か」
「将は合わせて四人ですな」
「うむ、しかし」
「しかしですな」
「この戦の仕方は侍の戦の仕方ではない」
その采配でもだというのだ。
「どうもな」
「はい、忍ですな」
「久助殿の戦い方に似ておるがな」
滝川は忍の出だ、今も織田家に仕えている甲賀者達をまとめている。
しかしだ、彼等の戦はその滝川よりもだというのだ。
「妙に暗いのう」
「相手の隙をですな」
「陰から狙う様じゃな」
「ですな」
「はい、確かに」
それは間違いないというのだ。
「あの者達は」
「この戦の仕方はやけに暗い」
例え大軍でもだ。
「かなり怪しいのう」
「長島から思っていることですが」
「御主もそう思うか」
「はい」
その通りだというのだ、家臣も。
「ここでも出て来ましたし」
「そうじゃな」
「この者達は怪しいとは思っていますが」
「この度は特にじゃな」
「まるで忍が足軽の様に」
大軍でだというのだ。
「攻めてきておりますな」
「全くじゃな」
「百姓ではありませぬ」
家臣は言った。
「これは明らかに」
「足軽は百姓がなるがな」
これは織田家もだ、百姓を兵として引っ張ることは織田家はしていないがそれでも百姓の次男や三男を雇っている。尚百姓を兵として引っ張る場合も次男や三男の所帯を持たないものをそうしているのが常である。
「しかしな」
「それは一向宗もですな」
「そうじゃ、一向宗もじゃ」
その彼等もだというのだ。
「百姓じゃ」
「だから百姓の戦の筈ですが」
「何故忍じゃ」
しかもだった。
「武器もよい」
「具足も付けていますし」
「それもあるしのう」
「考えれば考える程怪しいですな」
「しかも忍に見えてもな」
それもだというのだ。
「忍ではない」
「より暗いですな」
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