第七話 三人目その十六
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「それね」
「本当に忍者なんだな」
「そうね、正真正銘のね」
「これは強いな」
「しかもただの忍術ではないわ」
このこともだ、菖蒲は指摘した。
「やはり力が加わってるわ」
「身体能力が上がってるんだな、あたし達みたいに」
「そうよ、間違いなくね」
「じゃあ菊ちゃんもな」
「ええ、間違いなく一緒よ」
菖蒲は菊が跳躍し上から怪人に襲い掛かりその蹴り、飛び蹴りを放つのを見て言う。それは右足を上から放つ踵落としだった。
それを浴びせる、蹴りは怪人の脳天を直撃した。
かなりのダメージだった、だが。
怪人はそれで倒れなかった。ふらつきはしたがすぐに体勢を立て直してきた、それでだった。
持っているフェシングの剣で自分の前に着地した菊を激しく突いて来る、菊はその突きを忍者刀で防ぎながら言った。
「今の一撃に耐えたのね」
「効きはした」
怪人もダメージを受けたことは認めた、だがだった。
「しかしだ」
「それでもなのね」
「あの一撃では倒れない」
それだけの耐久力はあるというのだ。
「生憎だがな」
「少し決め技を出すのが早かったわね」
「決め技か。つまり貴様の切り札だったのだな」
「そうよ」
にやりと笑ってだ、菊は怪人の攻撃を防ぎながら答えた。白銀の刃が朝の裏通りに火花を散らし合っている。
「あの蹴りはね」
「そうか、切り札を出したのなら」
「後はないっていうのね」
「迂闊だったな、そのことは」
怪人の声が笑った、そして。
怪人は一旦間合いを離した、そしてだった。
突きをこれまで以上に激しく繰り出しながら突撃してきた、その突進を見てだった。
薊は目を鋭くさせてだ、菖蒲に言った。
「まずいな、こりゃ」
「相手が切り札を出してきたわね」
菖蒲も薊の言葉に応える。冷静な目のままで言う。
「あの娘が切り札を出してきたのを受けて」
「だよな、あれは迂闊だったかね」
「いえ」
だが、だった。ここで。
菖蒲は表情を変えずにだ、こう薊に言った。
「そうではないわね」
「?ああ、そうか」
菖蒲の言葉を受けてだ、薊はすぐに気付いた顔になった。それで言うのだった。
「そういうことか」
「わかったわね」
「切り札ってやつはな」
「そうよ。そういうことよ」
「だよな。これが駆け引きだよな」
「そういうことになるわ。ではね」
「わかってのことなんだな」
薊は確かな笑みを浮かべて菖蒲に応えた。
「菊ちゃんって頭いいんだな」
「ええ、薊ちゃんと一緒でね」
「あたしとかよ」
「頭の回転は早いわ」
そうだというのだ。
「いい感じでね」
「あたし馬鹿だけれどな」
「私はそうは思っていないわ」
薊にこうも告げた菖蒲だった。
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