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万華鏡
第七十一話 おとそその十

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「ちょっと止めてね」
「そうか、じゃあな」
「ええ、頼むからね」
「それじゃあな」
 美優も素直に止めた、それで彩夏の胸から手を離して言うのだった。
「そういうことでな」
「ええ、何か胸って触られると嫌なのよね」
「どうしてなの?」
 今度は琴乃が彩夏に問う、見れば琴乃の髪も彩夏の髪もそれぞれの頭の後ろで上に束ねられている。それは他の三人も同じだ。
「それは」
「いや、変な感じになるから」
「変な、なの」
「そうなの、触られるとね」
「それって気持ちいいとか?」
「うっ、それはね」
 琴乃の今の問いにはだ、彩夏は困った顔になって返した。
「あえて言わないってことでね」
「そういうことでなの」
「そう、ちょっとお願いね」
 こう言うのだった。
「わかるでしょ、琴乃ちゃんも」
「まあね。けれどね」
「けれど?」
「いや、何かこのお風呂って」
 風呂の話だった、今度は。
「景子ちゃんの言う通り熱いわね」
「ええ、あえてね」
 景子もここで笑顔で言ってきた。
「熱くしてるのよ」
「そっちの方が汗をかくから」
「だからなの」
「そう、これで汗をかいて」
 そしてというのだ。
「後でね」
「冷たいシャワーを浴びて」
「また、よね」
「そう、お風呂に入って」
 その熱い湯の中にというのだ。
「それを繰り返してね」
「二日酔い解消」
「それよね」
「二日酔いになったら残るから」
 そのままではそれこそ相当な時間をかけないと二日酔いは解消されない、酒の酔いはしつこいものだからだ。
 しかしだ、こうして風呂に入ってというのだ。
「こうしてね」
「お酒を抜いて」
「それでなの」
「そう、復活してね」
 そうしてというのだ。
「今日はお参りよ」
「初詣ね」
「それね」
「ええ、それで何処に行くかよ」
 微笑んでの言葉だった。
「どの神社にね」
「それだとな」
 ここで美優が挙げた神社はというと。
「八条神社じゃね?」
「あそこなのね」
「ああ、やっぱりあそこだろ」
 八条町で最も大きな神社であり日本でも屈指の神社だ。そして景子にとっても馴染みの神社でもある。その神社にというのだ。
「この町にいて初詣に行くのならな」
「そうなのね、じゃあ」
「まずは酒を抜いてな」
 そしてだというのだ。
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