第26局
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ヒカルが囲碁部の対局室の扉を開けると、中では尹による検討会が行われている最中だった。
「おや、進藤君じゃないか。いったいどうしたのかな?今は部活中なんだが?」
突然のヒカルの登場に、ざわめく対局室。
そんな中で、当然、尹はヒカルのことをはっきりと覚えていた。
噂の塔矢アキラの力を見るために招いた少年が、ものの見事にアキラを打ち倒して見せたのだ。その鮮烈なまでの強さは、尹の脳裏にはっきりと焼きついていた。
「先生、塔矢アキラの噂が、校内で広がっているのを知っていますか?」
そんなヒカルが発した一言に、尹は首をかしげた。
あかりは、ヒカルについてきたものの、対局室の中に踏み込む勇気もなく、扉の隙間からこっそりと中を覗き込んでいた。
−ヒカルぅー、お願いだから暴れたりしないでよぉー。
「塔矢アキラなんかたいしたことないって噂です。聞いてませんか?」
「何?初耳だな。いったいなんだってそんな噂が?」
「どうやらこの間のオレと塔矢の対局を見た連中が、面白そうに話を広げてるみたいですよ。つまり、ここの囲碁部の連中がね」
その言葉に、尹は驚き、部員達の中には気まずげな空気が広がった。
「おまえたち、そんなことを言っていたのか…」
尹は半ば呆れながら室内の生徒達を眺めた。
その言葉に、反発する声が上がった。
「事実なんだからかまわないじゃないですか!」
「そうですよ、ご大層な噂が先行した割には、全くの無名な奴にあっさり負けたんですから」
いまだアキラの力もヒカルの力も理解できていない大多数の部員達にとって、それはまさに正直な気持ちだった。
彼らの声を聞いて、尹は先日の対局後のフォローが全くできていなかったことを痛感した。
−しまった…、子供達の塔矢への反発心を軽く見すぎていたか…。彼らにとっては部外者。簡単に受け入れるわけにはいかないのに、この子達にあの碁は難しすぎた…。失敗だったな…。
部長の岸本もまた、部内の空気の変化には気付いていたものの、単純に後輩達の雰囲気が明るくなってきたもの程度にしか捕らえていなかった。これは、主に学内の噂が、塔矢がいる1年を中心に流れていたことも原因だ。
−後輩達にそんな噂が流れていたとは…。それで、進藤君が乗り込んできたか…。
「進藤、お前だって大した事無いんだから、囲碁部にまででしゃばってくるなよ!」
「そうだ、くだらないことで、部活の邪魔スンナよ!」
部員達の続く言葉に、尹は頭を抱える。どうやってこの場を収めたものかと。
「尹先生、少し部活の時間を俺に貸してもらえませんか?」
「…いったい何
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