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とある鎮守府の日常
手の届かない怪火
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に問います。ならば何故、あなたは助けを呼ばなったのですか。気づいてすぐなら呼ぶだけの猶予はあったでしょう」

 不知火の言うとおり提督にはそれをすることも出来た。最初に不知火が警告を言う前、瞳を閉じ独り言の様に言っていた時、非常用のボタンを押すことも出来た。
 だが提督は押さなかった。

「聞きたいことと、言いたいことがあった」

 押せばその機会が失われる。だから提督は押さなかった。
 危険性を考えればそれは愚かな行為とも思える。
 だが気づかれれば直ぐに殺され逃げられた可能性もある。
 今となっては無意味だが、理由を足すなら相手の話を聞き一時的に身の安全を確保出来る可能性もあった、という見方も一様出来はする。

「深海棲艦は皆、そういったものなのか。沈んだ者は皆、そうなるのだろうか」

 不知火は答えなかった。敵である提督の言葉に答える必要があるのかを考えているようだった。
 だがそもそも話す必要がないのなら直ぐにでも撃てばいいだけだ。
 少しして不知火は口を開く。
 
「私たち皆がそうであるわけではありません。元から艦娘としてそうなる者がいるように、元からそうであるものが殆どです。また、沈んだ者が全てがそうなるわけもありません」
「『私たち』か。……深海棲艦は十分な数がいると思ったが、何故そうする必要がある」
「資源は有効に使うだけです。使える可能性があるならばですが」
「わかり易い解答だ。つまり、君はそのまま使われたわけか」

 細部を見れば不知火は十分すぎるだけ変わっている。だがそれでも全体としては前の姿を見て取れるだけ残している。だから提督はそう言う。
 その言葉をどう受け取ったのか、不知火は提督を見据えたまま告げる。

「私はテストケースのようなものです。試作品で、姿が変わるほどの大きな改造をされなかったからです。それでも中身が変わるだけには捌かれ弄られています。他に沈めた船があったとして、馬鹿な期待をしているのならそれはありえません」

 一つ一つ、提督は気になっていることを聞いていく。
 本当に聞きたいことから目を逸らすように。「それ」が有り得るのか。
 その可能性を一つ一つ、確認して足場を踏み固めていくように。

「改造されると何が変わるんだ。そもそも、何を変えられるんだ」
「一通りの全てを。同族になるように中身を変えられます。構成物質で見ても既に半分近くが別物になっているでしょうね。そして何より敵対心を。わけもなく湧き上がる、あなた方への敵意を。これはきっと、深海棲艦に共通するものなのでしょうね」

 言われた言葉を飲み込み腑に落とすように小さく提督は息を吐く。
 そんな提督に不知火は怪訝な瞳を向け舌打ちをし、苛立ちを表すように砲塔を小さく揺らす。

「くどくど
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