手の届かない怪火
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的な白い肌に装甲のような体を覆う黒い武装。瞳は無機質で機械的な輝きを湛えている。
それは艦娘のものではなく、敵のそれに酷似していた。
姿は同じだが提督の記憶と明確な誤差を有する不知火は、砲口の先を提督からずらさぬまま、静かに言った。
「警告を。不穏な行動を取れば直ぐにでも頭を撃ち抜きます」
提督は両手を机の上に出し、握っていたペンも離す。
非常事態用のボタンも提督の机の下にはある。だがそれはずっと前からあるものだ。
不知火が前の記憶を持っているとするなら気づかないはずがない。そんな動きを見せれば次の瞬間には不知火は引き金を引くだろう。
「幾つか質問をいいかな」
不知火は答えない。だが提督は気にせず軽く周囲を見渡す。
「他に仲間がいる様子もない。狙いは私か」
「一人ならば可能性はあるだろうと。そういう任務です。不知火は任務を全うします」
不知火でやはり間違いないらしい。
ではこの変わりような一体どういうことなのか。一つの想像を浮かべる提督に不知火は淡々と告げる。
「末後の言葉があるならば」
提督が聞こうと思っていた目的を不知火は暗に伝える。
攫われるか、情報を聞き出すべく拷問されるか。
その辺りだと思っていたが、シンプルに殺すことだけが目的らしい。
ならばと、提督は末後の言葉などで無く質問を続ける。
「お前は、私の知っている不知火で間違いはないんだよな」
「はい」
「その様子だと、向こうの側になったと言うことか?」
「その通りです。驚くなら、亡霊か妖怪だとでもお好きに思ってください」
妖怪。確かにそうだと提督は思う。轟沈したはずの、死んだはずの不知火がいるのだ。
正しく八代の海の妖怪。あるはずのない姿を浮かばせる怪火、不知火だとも言える。
海の底にあるはずの姿を海の上に、果ては陸にまで浮かばせ写している。提督はそんな事を考える。
「ならば恨みか。動機は」
「違います。……敵を沈める。不知火は与えられた任務を全うするだけです」
「任務、か」
「理性的な理由も含め、本能的なモノも含んでいます」
本能レベルでの敵対心。深海棲艦にはそれに近いものがあると不知火は言う。
そしてそれは此度、深海棲艦になった不知火にもあるようだ。
「なら何故直ぐに撃たなかった。私がお前を認識する前、気づかせる前に殺せたはずだ。時間をかければ他の者が来る可能性は高い」
あと数分で今の秘書艦は部屋に来るだろう。それを不知火とて理解していないはずがない。
提督の言葉に不知火は何も言わない。
表情も変えぬまま提督から視線を動かさない。
「……不知火に落ち度はありません」
僅かな沈黙を挟み、不知火が言う。
「逆
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