第十三話
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けだ。数の上でなら警備部隊などをかき集めれば10万隻に上るだろうけれど当然それらの艦隊にも任務があるしなにより指揮をとれる人材がない。どう頑張っても私たち以上の数は用意できないよ」
ヤンはスクリーンに映ったフェザーンを眺めた。例えばの話だ。今この惑星に熱核兵器を打ち込んだらどうなるだろう?このたった1惑星に20億の人々が住んでいる。どうせ将来的には名実ともに帝国領になることは分かっている。この20億の人口、それも労働生産性が非常に高い、をそのまま帝国に渡すぐらいなら今の内に消してしまえばいいのではないか?フェザーンと言う人が消えれば同盟が負った国債も払わなくてもよくなる。
実行レベルではなんら障害はない。バグダッシュあたりに頼めば核兵器の使用から、公式見解用の偽造まで行ってくれるだろう。民主主義ではなく自分を崇拝している部下が数多くいるのも知っている。彼らを利用することも考えられる。拿捕した帝国艦から核兵器が発射されるのを映像に撮りその惨劇は物資を奪われるのを恐れた帝国軍がやったとでも言い張れば真実は闇の中である。
ヤンは頭を振りかぶった。自分が知能ゲームとして戦争や謀略を好んでいることを知り同時にそれを嫌っている自分がいるのも知っている。
自分の中のある部分がこう言っている。
「どうせ死ぬのは帝国人だ。同盟市民でないやつらをどうして気遣う必要がある?捕虜の人数が減れば艦隊行動も素早くなるし、ましてや僅かとはいえ降下部隊にも被害が出る。百害合って一利なしじゃないか。どうせもうイゼルローンで民間人を殺している。やつらもハイネセンへの無差別攻撃をたてに降伏を迫ってくるようなやからだ。気にする必要なんてない」
もう一つの部分はこういっていた。
「確かに、われわれはイゼルローン要塞ごと民間人を殺した。けれどもそれはあくまで仕方のないことだ。相手が十分な戦力を持ち抵抗の意思があったためだ。今回は違うだろう。フェザーン市民はわれわれに協力的な者も多い」
結局ヤンはフェザーンへの熱核兵器を使った無差別攻撃はしなかった。
もとよりヤンはこの手の陰謀を幾度か思いつくのである。たとえばリップシュタット戦役で門閥貴族に策を授け内戦を長期化させることで人的・物的消耗を強いようとしたり、帝国軍の手を読むのにもその陰謀を思いつく能力が使われている。結局ヤンは自分にその権限がないとしてその陰謀をどれ一つとしてまともに実行または阻止できていない。今はヤンが言い訳にしてきた権限が手の中にある。自由惑星同盟宇宙艦隊総司令長官、同盟軍制服組のナンバー2.ヤンはその権力を持て余していた。
フェザーン攻撃から8日後、同盟軍は一般的な2kmを超える全長を誇る輸送艦にこれでもかと帝国の人員を詰め込みフェザーンを出立、帝国領に入った。
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