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万華鏡
第七十話 大晦日その十一

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「いや、本当に」
「里香ちゃんもそう思う?」
「ええ、凄い人ね」
「正直滅茶苦茶迷惑な人だよな」
「そうよね」
 美優と琴乃もこう話す、その人については。
「というかその人今年凶ひいて欲しいな」
「絶対にね」
「そうしたら阪神が日本一になるならな」
「是非ね」
「ちなみにその人は凶ひいてどうなったの?」
 彩夏は景子のその人自身のことを尋ねた、阪神に敗北をもたらすというこの上ない疫病神と呼ぶべき人のことを。
「悪いことあったの?」
「いえ、かえってよかったそうよ」
「そうだったの」
「大学に受かって彼女も出来て割のいいアルバイトにも入られてね」
「いいこと尽くめだったのね」
「そうなの、凶をひいてもね」
「ううん、悪い年にはならなかったのね」
 そのことを聞いて頷いて言う彩夏だった。
「別に」
「そう、そもそも凶は滅多にないから」
 またこのことについて言う景子だった。
「ひいた方が運がいいかも知れないわ」
「そういうものなのね」
「そう、じゃあどんどんお仕事しようね」
 こうしてまた仕事に移る五人だった、そして朝食に出て来たのは。
 お雑煮だった、白味噌に野菜や山菜が入ったものだ。琴乃はその景子の家のお雑煮を前にしてこうしたことを言った。
「景子ちゃんのお家は白味噌なのね」
「ええ、そうなの」
「それでお野菜に山菜なの」
「精進風でしょ」
「そうよね」
 琴乃はそのお雑煮を見ながら景子に応える。
「しかも京風ね」
「うちも白味噌なのよ」
 ここで里香も言ってきた。
「お雑煮はね」
「京風なのね」
「そうなの」
「私のお家のはね」
 琴乃は二人の話を聞いてから自分のことを話した。
「お吸い物風で鶏肉が入ってるのよ」
「うちはお野菜と鶏肉なの」
 里香は景子と同じ白味噌でも中に入っているものがやや違っていた。
「そうなっているの」
「同じ白味噌でもまた違うのね」
「そうみたいね」
「あたしのところは鰹節と普通のお味噌でさ」
 美優も自分の家のお雑煮のことを話す。
「茸とか山菜だよ」
「そうなの」
「ああ、沖縄風とかじゃなくてさ」
「鰹節と普通のお味噌なのね」
「麦は麦味噌な」
 こちらの味噌だというのだ。
「そっちだよ」
「成程ね」
「私のところはお葱とかお漬けもの入れてね」
 彩夏も話してきた。
「あっさりとお吸い物風よ」
「お漬けもの入れるのね、彩夏ちゃんのところは」
「そうなの、私のお家のはね」
「何かお雑煮もそれぞれね」
「地域ごとによって違ったりするよな」
 美優はその景子の家のお雑煮を食べつつ話す、五人共そうしている。
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