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万華鏡
第七十話 大晦日その八
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「宗教学部神道学科のね」
「景子ちゃんが希望している学部ね」
「そこの生徒さんなの。もう一人いてくれてるけれど」
 バイトの巫女さんはだ、その学生さんの他にもう一人いるというのだ。
「その人も今年の冬は駄目だから」
「その人はどうしたの?」
「彼氏と。婚前旅行なの」
 景子は苦笑いで述べた。
「大学生同士で結婚されるって」
「あっ、それでなの」
「その人もいてくれないから」
「私達が助っ人なのね」
「そうなの。その人は高知の方の神社の娘さんでね」
「本職さんばかりなのね」
「やっぱり本職さんは違うの」
 生まれてから神社にいる人はだ、やはり違うというのだ。このことはそこが生活の場であったから当然と言えば当然である。
「私よりわかってるから、神社のこと」
「それでなのね」
「その人達がいてくれたからね」
 バイトが二人でもやっていけたというのだ。
「けれどお二人がいてくれないから」
「今年は私達なの」
「まあね。仕方ないからね」
 その二人の人が今神社にいないことはというのだ。
「ご実家のこととご結婚のことだから」
「そうよね、どうしてもね」
「そう、だからお父さんもお母さんも仕方ないなって」
「それで丁度私達がアルバイトに来て」
「助かったわ」
 真剣そのものの言葉だった。
「このままだとどうしようかって思ってたから」
「元旦は人手が必要だから」
「そう、ただね」
「ただ?」
「うちの前にもちゃんと出店が出てるから」
 見ればかなり賑やかに出ている、神社の前に左右にそうした店達が連なっている。合わせて何十もある。
「あそこも楽しんでね」
「出店ね」
「一杯あるから」
「ええ、じゃあ働きながらね」
「お願いね。ご近所の人達も持ってきてくれるから」
 景子はこの言葉は四人に話した。
「焼きそばとかたこ焼きとかお好み焼きとか」
「お酒欲しくなるわね」
 そうした食べもの、出店の定番を聞いてしみじみと言ったのは琴乃だった。
「何か」
「それは我慢してね」
「今はお仕事だから」
「甘酒で我慢してね」
 酒は酒でもそれでというのだ。
「そういうことでね」
「ええ、わかってるから」
「お酒は夜ね」
 その時んいというのだ。
「夜に一杯あるから」
「おとそね」
「それとおせちもあるから」
 これは五人がそれぞれ持って来たものだ。
「それを楽しみにしてね」
「今はよね」
「そう、頑張ろう」
 五人は夜の中でも働いた、そうして何時間か働いていると。
 次第に明るくなってきた、外を見ると。
 いよいよだった、それで景子は四人に言った。
「皆、今からね」
「日の出ね」
「それね」
「そう、だからね」
「初の日の出ね」
「今から」
「折角だから」
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