第七十話 大晦日その六
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「いいわね、食べなさいよ」
「身体が冷えないからね」
「女の子は身体を冷やしたらいけないの」
ただ風邪をひいては駄目とかそういう話以前にだというのだ。母の娘とその友達への言葉は真面目なものだった。
「甘酒には生姜たっぷり入れておくから」
「生姜もなの」
「生姜もいいのよ」
身体を温めるというのだ。
「元旦は暖かくよ」
「神社の中でも」
「そう、温めて頑張りなさい」
元旦の修羅場をというのだ。こうした話をしてだった。
五人は巫女姿で神社の中に入った、すると表には。
参拝の人がもう既に来ていた、そのうえで待っている。
その彼等を見てだ、琴乃は自分の左手の時計を見てから四人にこう話した。
「ねえ、まだね」
「元旦じゃないわね」
「十一時四十分よ」
琴乃はこう里香に話した。
「まだね」
「紅白まだやってるわよね」
「今結果出たわよ」
彩夏は丁度自分達がいるお守りや破魔矢を売る場所に置いてあったかなり古い白黒でないことが救いという程のテレビを見つつ四人に話した。
「丁度ね」
「どっち勝ったの?」
「白組よ」
そちらだというのだ。
「勝ったのは」
「そう、そっちなの」
「ええ、まあ紅白はね」
「どっちが勝ってもね」
「あまりね」
彩夏は首を傾げさせつつ琴乃に応えた。
「意味ないわよね」
「正直どっちが勝ってもいいわよね」
「観て聴いて楽しむものだからね」
「別にどっちが勝っても」
「そうそう」
構わないというのだ、そしてだった。
彩夏はここでだ、その映っているテレビをまじまじと見つつそのうえで景子に問うた。
「ねえ、このテレビってね」
「相当古いでしょ」
「何時のテレビなの?」
「三十年、いや四十年かしら」
「そんな昔のテレビなの」
「よく映ってると思うでしょ」
「まあね」
画像はかなり悪い、しかし映っていることは確かだ。それで彩夏も首を傾げさせつつそのうえで景子に言うのだった。
「四十年って」
「凄いでしょ」
「いや、最初白黒かと思ったわ」
「幾ら何でもそれはないから」
白黒テレビは、というのだ。
「というか白黒テレビって私見たことないわよ」
「私もよ」
それは彩夏もだった。
「幾ら何でもね」
「オート三輪とかもね」
「もうないでしょ」
「というか何時頃の話よ」
白黒テレビもオート三輪もというのだ。
「まずないでしょ」
「そうよね、もうね」
「昭和三十年代?」
東京オリンピック前である。
「もうそこまでなると」
「確かその頃だよな」
ここで美優はこう言ってきた。
「稲尾さんとか杉浦さんとか」
「あの伝説のピッチャーの人達」
「その人達ね」
「あの人達昭和三十年代だろ」
まさにその頃のピッチ
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