第七十話 大晦日その三
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「あんたもわかってるわね」
「ええ、明日のことよね」
「頑張ってもらうわよ」
こう娘に言うのだった。
「巫女さんとしてね」
「わかってるわ。じゃあ十一時半位に」
「巫女さんの服に着替えてね」
「それまでは普通に支度ね」
「そっちも頼むわよ」
母は娘に話していく。
「明日が一番忙しいから」
「そうよね、一年の中でね」
「神社にとってのお正月は修羅場よ」
まさにそうなる、そうした意味で正月は特別な日なのだ。
「不眠不休になるわよ」
「毎年そうよね」
「当たり前よ。この世がある限り一年はあってね」
「元旦も来るのね」
「絶対に来るものよ。それでお母さんも歳を取るのよ」
「いや、歳を取ることはね」
それはとだ、景子は母に笑って返した。
「そんなに嫌じゃないでしょ」
「それはお母さんの歳になればわかるわよ」
「ってお母さんまだ四十五じゃない」
「もう四十五よ」
これが娘への返答だった。
「もうね」
「もうなの」
「そう、もうよ」
うんざりとした顔で娘に述べる。
「そして来年は四十六になるのよ」
「私を産んだ時まだ二十代だったのね」
「それが今や四十代も後半よ」
四捨五入すれば五十になる、実に複雑な年頃だ。
「人間歳は取りたくはないわね」
「私もそんなこと言うようになるのかしら」
「絶対になるわよ」
母は娘にこのことを断言した。
「安心しなさい」
「安心していいの」
「ええ、いいわよ」
そうなってもだというのだ。
「絶対に歳を取ることが嫌になるから」
「四十代になったら」
「いや、二十五を超えてからよ」
その時からだと言う母だった。
「もう歳は取りたくなくなるのよ」
「そういえば二十歳を超えたらおばんって言葉あるわね」
「二十五まではその言葉は笑えるの」
あくまでその時まではだった。しかし二十五になるとその笑える余裕がなくなってしまうというのである。それで言うのだった。
「いい?二十五を超えたらよ」
「シビアね」
「ついでに言うとお肌の曲がり角よ」
その二十五歳がというのだ。
「そこからは髪の毛も新陳代謝も落ちてね」
「おばさんになっていくのね」
「そうよ、なっていくのよ」
「おばさんねえ」
「熟女とか言うけれど」
この言葉については忌々しげに言う母だった。
「実際は違うのよ」
「おばさんなのね」
「そう、おばさんよ」
熟女とおばさんの間にはそれこそチョモランマよりも高くマリアナ海溝よりも深い隔たりがある、それがわかっての言葉だ。
「実際はそうなのよ」
「おばさんなのね、二十五以上は」
「そこで熟女になりたいなら」
一応それにはなれるというのだ。
「必死に努力することよ」
「必死なの」
「そう、女を磨
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