十幕 Lost Innocence
6幕
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埠頭に入り乱れるは、剣戟の金属音と爆音烈音。今やマクスバードの港は小規模ながら大火力の戦場と化していた。
「しぶといな、人間は――まったく醜悪極まる!」
クロノスが片手を天に掲げた。それを見て、大技の到来を感じたフェイの背筋に怖気が奔った。
「だめ! にげて!」
ルドガーたち、クロノスと刃を交える仲間全員に叫んだが、遅かった。
ビットが3つずつ組まれたリングから、マナの豪雨が全員に降り注いだ。
通常ならこの秒数では集まらないはずの大量のマナ。それをこの時空を司る精霊は、あらゆる空間から掻き集めて、惜しみなく降らせたのだ。
あちこちで悲鳴や苦悶の声が上がった。
だというのに、クロノス自身は涼しい顔で、フェイたちを睥睨する目に変化はない。それどころか、フェイたちの前で自身の肉体時間を巻き戻し、ダメージから全快してみせた。
「そんな……反則でしょ!?」
「パパ!」
フェイは膝を突いて苦しげにしているルドガーの下へ駆けて行き、ルドガーに寄り添った。
「念入りに命の時を停めるとしよう」
「ルドガー! フェイ!」
走ってきてルドガーとフェイを庇うように立ったのはエルだった。
「どけ」
「やだっ!」
「二度は言わぬ」
クロノスがエルに向けた手の先に術式陣が現れる。
「どかないよ……ルドガーは、エルの……!」
(お姉ちゃん、それって、お姉ちゃんはルドガーのこと……)
「たった一つの命。無駄に捨てるな」
その時だった。まるでエルを庇うようん、エルの前にいつのまにかビズリーが立っていた。
「ビズリー・カルシ・バクー……」
「カナンの地に入る方法なら、私が知っている。――――――だろう?」
遠さか、風のいたずらか。とにもかくにもフェイにはビズリーの答えが聞き取れなかった。
「……貴様」
「おっと。最後の〈道標〉、〈最強の骸殻能力者〉は分史世界で手に入れた。正史世界には、まだ残っているぞ。私と〈クルスニクの鍵〉、同時に相手をしてみるか?」
ビズリーはルドガーを指しながら言った。
「ビズリーさんも骸殻を…!?」
「――ならば」
クロノスが消えた。と、思った時、クロノスはフェイとルドガーの目と鼻の先にいた。クロノスが編み上げているのは、空肝転移の術式。
「〈クルスニクの鍵〉だけでも!」
助からない。ミラのように次元の狭間に飛ばされる。フェイはそう思ったのに。
「させるか!!」
ユリウスが間に飛び込み、クロノスにタックルを食らわせた。術の発動に巻き込まれ、クロノスとユリウスは諸共、フェイの前からどこかへ消え失せた。
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