高校2年
第三十六話 当事者と傍観者
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水面地区の高校野球には通じるようになったが、地元に居た頃は高校野球など興味が無かったので、翼は水面民の宮園が知っている事情すらも知らなかった。今も、南海学園よりずっと気になっている事があった。
「……!!」
見つけた。内野席の遠くの方。斧頃高校の制服を着て、しかし頭には南海学園の野球帽を被っている少女。葵である。遠くの方から、翼をジッと見ていた。
「ちょっと、トイレ行ってくる」
そう言って翼は席を外した。
隣の枡田が、ジトーッとした目で翼を見ていた。
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「水面に試合見に来るって、南学の応援のついでにって事だったんだ」
「え?知らんかったん?メールにもそう書いたんに。」
球場の外で翼は葵と落ち合った。葵のセーラー服姿を、翼は初めて見た。日焼けを気にしていないのが三龍の女の子とは大分違うが、スカートも短く、女子高生だなぁ、と翼は思う。一方で、翼のユニフォーム姿も葵にとっては初めてだった。葵は翼の周りを一周して、じっくりとその姿を見た。
「……よう似合いよるやん、ユニフォーム。」
「ま、野球部だしね。」
「今日は1人早く来て、三龍の試合も見よったんよ。翼、レフトでノック受けよった。」
「え?試合前ノックの時から居たの?俺、分からなかったな」
「はー?ちゃんと見よったけぇー」
いたずらっぽく葵が笑う。
翼も自然と笑顔になった。
「……カッコ良かったよ」
「え?」
「翼があんなに何かを一生懸命しよるん、初めて見た。カッコ良かったよ。」
そう言った葵は、少し気恥ずかしそうにそっぽを向いた。翼は、カッコ良かった、そんな単純な一言で胸がいっぱいになるのを感じた。頑張ってて良かった、かな。少し、自分が認められたような気がした。
「はーい、はいはい、そこまでですー」
「イチャイチャタイムは終わりや終わりー」
「チームから離れて彼女と逢瀬とは、頂けないな好村」
翼はドキッとして、後ろを振り向いた。
枡田、鷹合、宮園の3人が柱の影に隠れ、目元だけを出しながら翼を見ていた。3人の視線は、全員が全員相当に冷ややか。揃いも揃ってジト目であった。その視線が、ゆっくりと移り、今度は葵を射止める。葵はビクッと身をすくめた。
「……可愛いっすね」
「ヨッシーの彼女、て感じやの〜」
「……そんなに可愛いか?」
宮園が1人だけ厳しい意見を言うと、枡田と鷹合は「え〜っ!」と信じられない顔をした。
「このレベルで可愛くないって、宮園さんどんだけ面食いなんすか!」
「これやさけイケメンはアカンねん!心が歪んでもーちゃーるわ!」
「…………」
勝手に品定めされた葵としては、閉口するしかなかった。
「ご、ゴメン、悪い奴らじゃな
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