暁 〜小説投稿サイト〜
打球は快音響かせて
高校2年
第三十六話 当事者と傍観者
[4/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
。苦かった。無糖だった。

「生徒らは、お前に監督してもらって良かったと思いよるみたいやけ、今はこれでええやろ。とにかく、次も勝つ事に集中しようや。生徒もそれを望んどるやろ。」
「……はい」

浅海の表情が、疲れた表情からキリッと引き締められる。一瞬にして“指導者”の顔になり、生徒達の下へと向かった。



ーーーーーーーーーーーーーーーー


「渡辺お前どうしてもーたんや?」
「4の4は当たりすぎやろ〜」

試合後、次の相手を見る為に観客席に終結した三龍ナイン。初戦で大活躍した主将・渡辺が皆に声をかけられていた。

「まぁ、気持ち入りよったけん。日真脇のチームにゃ負けられんし、ここ二試合クソやったけんな。」

そう語る渡辺の頭は、傍目には青く見えるくらい刈り込まれていた。地区の準決勝決勝の二試合で1割近く打率を落とした反省と、故郷のチーム相手の活躍を誓って、決意の五厘刈りである。素振りや打ち込みの数を大幅に増やして、この初戦に間に合わせてきた。

「これで、日真脇の田舎を出てきた甲斐があったっちゅーもんやの」

しみじみと言う美濃部は、今日も先発し7回2失点のまずまずのピッチング。もうすっかり、エースとして定着している。勝ち気な童顔が、今では頼もしい。

ドンドンドドドン
「「「我ら〜パシフィカン♪
世界の南学(世界の南学!!)
た〜お〜せ〜白陽〜
無敵のナンガクーッ!!」」」
ドドドドドドン

不意に、三塁側のアルプススタンドから爆音のような大応援が聞こえてきた。木凪・瑠音地区の1位校、南海学園のアルプススタンドからだが、アルプススタンドはギッシリ応援団が詰まり、入り切れない人が内野席にまで侵食してきていた。
このド迫力に、三龍ナインは目が点になる。

「……ねぇねぇヨッシー、南海学園て木凪の糞田舎の学校なんでしょ?」
「斧頃島、ね。」
「応援ヤバないっすか?南海学園ってとんでもないマンモス校なん?」

隣の翼に枡田が尋ねる。翼は南海学園のアルプススタンドをじーっと見た。翼は目がいい。アルプススタンドで応援している人達には、結構見覚えがある。

「……斧頃高校の生徒に、漁師さんに商店街の人まで……これ多分、島挙げて応援来てる」
「泣ける話だな。過疎が進む田舎から甲子園を目指すという物語か。」

頬杖をついてグランドを眺めながら、宮園が言う。

「高校野球で島を元気にしようとか、そういう事なんだろう。南海学園の神谷監督は元々商学館の監督だった人だ。強化の為にまず監督から揃えるってのはよくある話だよ。それにしても創部2年とかでここまで来るのは少し出来過ぎだよなぁ。」
「…………」

自分の地元の学校にも関わらず、何故か宮園の方が詳しい事に翼は苦笑いした。今でこそ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ