高校2年
第三十六話 当事者と傍観者
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何度も何度も、2年生のベンチ外選手に確認をとっていた。地区大会から応援を引っ張り続けていた2年生にこそ団長をやらせるべきだと牧野は思ったのだが、2年生達は固辞した。
「まだ俺ら、応援を仕事にしたくはないんで。団長したら、そっちのが楽しくなっちまいそうで……やけん、牧野さんがやって下さい」
「そ、そうか……何か目立っちまって、悪りぃ気がするなぁ」
団長の牧野に、副団長の林が歩み寄る。
主将だった林も、アルプスでの応援については、牧野より下の立場だ。
「そろそろサタデーナイト、行っとこうで。“スタンドの神様”。」
「うるせー、皮肉かいや」
林を小突く牧野は、しかし満更でもない顔をしている。牧野が手元のメガホンを持って音頭をとると、事前の応援練習通りに、全校生徒による口ラッパが響いた。
「「「さぁいこうぜどこまでも
走りだせ 走りだせ
輝く俺たちの誇り 三龍 三龍
うぉっおっお〜お〜」」」
「イイですねぇ、こういうのは……」
アルプススタンドの1番高い所から見下ろしながら、校長がしみじみと言う。野球部の思わぬ快進撃には、半ば強引に浅海を監督にした校長も、実に満足げな表情だった。
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「「「さぁチャンス到来 やりたい放題
お祭り騒ぎで打ちまくれ
ドヤ顔でお立ち台へ 夢の甲子園掴み取れ」」」
三龍アルプスから聞こえる大音量のチャンステーマ「Good Lucky」の替え歌を聞いて、観客席の南海学園ナインはおぉーと驚きの声を上げた。
「ええ曲使うとるの〜」
「俺らもノッてまいそうやわ」
眼下のグランドでは、その旋律に乗りに乗った渡辺が合いの手とばかりに快音を響かせた。打球は右中間に弾み、ランナーが一人二人と帰ってくる。2塁に滑り込んだ渡辺は大きくガッツポーズ。三龍ベンチ、そしてアルプススタンドはお祭り騒ぎ。三龍の勢いは確実に日真脇南を飲み込みつつある。
「この1番バッターは要注意やのう。これでヒット4本目か。体は小さいが腰がよう据わっとるし、ええ振りしよるわ。」
よく日焼けした顔の濃い若者達の中でちょこんと座っているのは、白髪と、伸びっぱなしの白髭がトレードマークの南海学園監督・神谷史郎。
齢70近い老将である。
「ふーん、葵さんの彼氏のチーム、普通に強いんねぇ。コールドになりそうな勢いやないか。」
知花はふん、と鼻を鳴らした。
もちろん、南海学園は“葵の彼氏のチーム”を見に来ている訳ではない。
南海学園にしてみれば、今日の初戦に勝つと次の準々決勝で対戦するのが今目の前で繰り広げられている試合の勝者なのである。
キーン!
「キェェエエエエエエ!」
また快音と、奇声が
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