第百話 加藤との話その三
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「それで勝つんだよ」
「運もですか」
「運が悪いとやっぱり負けるだろ」
「はい、そういうことありますね」
上城も運の存在は否定しなかった、彼にしても剣道での試合や稽古の中での練習、そして剣士の戦いの中で運があった、と思ったことがままにしてあったからだ。
だからだ、彼もそれは否定せずに言うのだった。
「だからですか」
「ああ、運も本当にな」
「実力のうちですね」
「運の要素も強さだよ」
「そうですね、ですが運は」
「ああ、不確定なものだからな」
まさにだ、不確定要素だというのだ。運というものは。
「それはどうしようもないからな」
「自分ではコントロール出来ないですね」
「それはあてにしないことだよ」
どれだけ重要なものでもだ、それはというのだ。
「大事なことはやっぱり他のことですね」
「力に技にだ」
「そうしたものですね」
「それを磨くんだよ、まあ運は祈るしかないさ」
「神様に」
「神様がやらせている戦いで祈るのも何だけれどな」
それでもだとだ、笑って言った中田だった。
「それでもだよ」
「そこはですね」
「ああ、運は祈ってな」
「その他のことをですね」
「磨くんだよ、俺との闘いも役立ててくれよ」
「はい」
確かな顔でだ、上城は中田に答えた。
「お願いします」
「そうしてくれよ、じゃあな」
「それじゃあですか」
「俺今から妹を迎えに行って来るな」
「妹さん戻って来られたんですか」
「親父もお袋もな」
両親達もだった、笑顔での言葉だ。
「戻って来てくれたよ」
「願いは適ったんですね」
「よかったよ、もう俺は戦わないさ」
「剣士としてもですね」
「他のこともな。俺はただの剣道をやる人間に戻るよ」
「そうですか、じゃあまた」
「今度は剣道でやろうな」
中田は穏やかな笑顔で上城に告げた。
「楽しみにしてるな」
「はい、お願いします」
「やっぱり剣道はいいな」
「そうですね、心が磨かれる感じがして」
「それが剣道なんだよ」
やはり活人剣だった、中田の剣道は。そしてそれは上城もだ。
「暴力じゃないんだよ」
「そのことは絶対ですよね」
「あの暴力教師みたいにな」
あのだ、中田が成敗した不逞の輩のことも話に出した。
「ああいうのは剣道やったら駄目なんだよ」
「心を鍛えていないからですね」
「ああいう奴はスポーツをしていてもな」
「勝つだけで、ですね」
「だから生徒に暴力も振るうんだよ」
そうなるというのだ、指導者になっても。
「負けると自分の得点にならないだろ」
「はい、その場合は」
勝てばその生徒を教えたとして教師の得点になるのだ、それを狙って生徒を教える教師もいるのだ。これもまた教師の世界だ。
「だからですか」
「ああ
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