11:素顔を暴けば、こんなにも
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コーヒーの香りと苦味、そしてデザートの優しい甘さは俺達の凝り固まった心を解きほぐしてくれていた。
だからなのだろうか、ゴキゲンな俺達の胃袋は空腹の訴えをし始めた。無理も無いと言える。
時間はちょうど、昼時を迎えていた。
「ふふっ、すぐランチを作ってくるわね。それまではどうぞ、ごゆっくり」
と言い残し、マーブルは空の食器をトレイに載せ、鼻歌に軽い足取りでカウンターの奥へと向かっていった。
結局、彼女は終始俺達をずっと満足そうなニコニコ顔で眺め続けていた。それに気付いていた俺は少々照れ臭くもあり、そのせいでアスナ達の雑談にも生返事ばかり返してしまい、三人から顰蹙を買われてしまった。まぁ、マーブルも含めた全員が上機嫌にある事も考えれば、極めて安い代償ではあったが。
すると、ちょうど入れ替わるように。
昼にはまた降りてくるという去り際に残した言葉の通り、コツコツと階段を降りる音と共に、ユミルが戻ってきた。
「……………」
ユミルは無言で俺達を一瞥すると、まるで見なかった事のように俺達とは離れた暖炉の前の床に腰を落ち着け、曲げた膝を抱えながらその火をただぼんやりと眺め始めた。
「……ちょっと、行って来ます」
途端、シリカが膝の上眠るピナをソファの傍らにそっと置き、立ち上がった。その目線はユミルへと注がれている。
「どうした、シリカ? ……もしかして、ユミルへ何か用なのなら、無理しなくても代わりに俺が――」
「邪魔しちゃダメだよ、キリト君」
アスナが席を立ちかけた俺に向かって、小声でピシャリと言った。
「な、なんだよ」
「いいから。あんたはそこで見ててなさい」
リズベットに肩を掴まれ、無理矢理着席させられる。
俺は訳が分からないままに、シリカがユミルの元へと向かう。
ユミルは彼女が近付いているのに気付いているはずだが、わざとか顔は全く動かさずに揺れ動く炎に向けられたままだった。
「あの……ユミルちゃん」
「やめて」
「えっ?」
シリカはピクッと肩を浮かせ、対するユミルは話すのも嫌そうに眉を顰めている。
「……ちゃん付け、やめて」
「え、あっ、ごめんなさい……ユミル、さん……」
「……なに?」
ユミルは退屈そうに曲げた膝を腕で抱きしめるも、まだシリカを見ようとはしない。
「えっと……まず、ピナのこと……ありがとうございました」
ぺこりと頭が下げられる。
「ピナ……それって確か、キミの使い魔の……?」
「は、はいっ」
シリカはその問いにパッと頭を上げて嬉しそうに言うも、ユミルはまだ顔を此方に向けられておらず、少し肩を落とす。
「無事な
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