11:素顔を暴けば、こんなにも
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表情の切り替えを出来る人は、意外とそうは居ない。居るとすれば、それはよっぽど感情にまっすぐな素直で子供のような人間か、よっぽど悪徳を極めて熟達した詐欺師のどちらかなのだが……ユミルの場合、後者はもはや有り得ない。
何故ならば、ユミルは俺達の目の前でピナを……俺達にとってはかけがえの無い仲間の相棒であり、ユミルにとってはたかが赤の他人の使い魔一匹である小竜を、身を呈してまでして救ってみせたからだ。
俺もようやく納得した。アスナの受け売りになってしまうが……きっとそうなのだ。
――ユミルは、思っていたほど悪い奴じゃないのかも知れない。
俺個人の本音を言うと、これはこれで可愛いヤツだとすら思う。
………………。
「……………」
「……………」
と、ユミルの無言がやたらと長く、そろそろ顔の前で手でも振ってやろうかと考え始めた頃、
「…………分かった。その条件でいい」
顔を真面目にさせ、頷いてくれた。
「お、言ったな。二言は無いな?」
「無い。絶対……ボクが勝つんだから」
確固たる自信を孕んだ真剣味溢れる発言に、つい不適に微笑んでしまう。
――敵味方に関わらず、こういう顔が出来る奴は……俺は嫌いじゃない。
「よし、決まりだな。どこでやる?」
「ついてきて」
ユミルは待っていたとばかりに踵を返し、ツカツカと足早に外への扉へ歩き出し、俺も後に続く。が、
「ダーメ♪」
と出口の一歩手前で、真横から優しい制止の声が掛かった。
すぐそばのカウンターに、戻ってきたマーブルさんが俺達二人をニッコリと見据えていた。
「何やら物騒なお話になってるみたいね、ユミルにキリト君。ケンカはダメよ?」
その問いかけに俺は軽く笑って見せ、
「いえ、これからユミルと仲直りしに行くんですよ。もし俺が勝ったら、ユミルは晴れて俺達の仲間入りです。しかも加えて今宵の晩餐は一緒にディナーも食べてくれるそうですよ」
と答えると、マーブルはわざとらしく合わせた両手を頬に添え、軽く首を横に傾けた。
「まぁステキ。本当なの、ユミル?」
「ち、ちがっ……! とにかくっ、ボクらはこれから外に出るからね!」
「だから、ダーメっ」
マーブルはカウンター越しに手を伸ばして、ユミルの額を指で軽く『めっ』と小突いた。
「な、なんでっ」
つつかれた額を押さえながら、半ば涙目になりながら訴えるユミル。それを眺めるマーブルはどこかとても嬉しそうで、
「今からランチタイムなのよ? キリト君達には、これを冷めない内に食べてもらわないと困るもの」
と、カウンターの木のテーブルに、先程の大きいトレイが置か
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