第六十九話 十二月になってその二
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「昔の阪神みたいに」
「そうね、特に前の親会社がね」
里香も眉を曇らせて琴乃に応える。
「どうにも、だったから」
「あの時いつも最下位でね」
「しかもストーブシーズンはああで」
不祥事というか主力選手が出ていく話ばかりだったというのだ。
「監督はしょっちゅう交代してね」
「どうにもならなかったわね」
「昔の阪神もよね」
二〇〇〇年代初頭までだ、あの日本一の二年後の最下位から。
「ああして弱くてお家騒動ばかりで」
「昔は阪神がお家騒動のメッカだったのよ」
「嫌なメッカね」
「けれどね」
実際にそうだったというのだ。
「毎年毎年騒動が起こってたのよ」
「誰か出るとか?」
「江夏さんとか田渕さんね」
二人共大騒ぎの結果他球団に強制的に移籍させられている。田渕に至っては突然の電撃トレードで本人にとっても青天の霹靂だったという。
「あとバースさんも掛布さんもね」
「綺麗に辞めてないのね」
「江本さんもね」
シーズン中にベンチ、球団上層部を批判して退団している。この退団騒動もまた阪神の歴史において語り草になっている。
「村山さんも小山さんもね」
「多いわね」
「それと監督交代もね」
これもだった、阪神においては。
「毎回揉めたのよ」
「今はスムーズよね」
「簡単にお話が進むわよね」
「もう次はこの人だ、って感じでフロントが指名してね」
星野以降のことだ。岡田、真弓、和田と野手出身の監督が続いている。
「進んでるからね」
「今は本当に」
「そう、かなりよくなったわ」
お家騒動もだというのだ。
「阪神はね」
「横浜は違うのね」
「あそこはね。むしろね」
「阪神よりもなのね」
「そう、大変なことになってるから」
そのお家騒動がというのだ。
「あそこはね」
「やっぱりお家騒動ってよくないわね」
「何処の家でもそうよ」
ここでこう言った景子だった。
「やっぱりお家騒動はね」
「ないに限るわよね」
「お家でもフロントでもね」
何処でもだというのだ。
「起こったら大変よ。大抵後味よくないし」
「身内での喧嘩ってそうよね」
「そう、身内であるだけにね」
余計にというのだ。
「嫌なことになるのよ」
「後に残って」
「誰も幸せにならないから」
だから阪神も」
「そうだと思うわ」
景子は琴乃に微妙な顔で話した。
「お家騒動が起こらなくなったから」
「強くなったのね」
「巨人でもね。お家騒動が続いたからね」
このチームはある意味阪神以上にそれが根強い、親会社の権力闘争まで関わってきて余計にややこしくなるのだ。
「ああなったのよ」
「最下位ね」
「巨人の最下位はいいけれど」
それにしてもだというのだ。
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