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ネギまとガンツと俺
幕間 第30.5話「空話〜独りの夜〜」
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けば本物へと変貌していた。

 その自分の想いすら愛しく、嬉しかった。

 だから。

『さようなら』

 辛かった。

 初めて自分に咲いたまるで華のようなこの心は一瞬で咲き、そして一瞬で散っていった。

『やつはもうすぐ死ぬことになる』

 悲しかった。

 手に入った憧れは、まるで夢のようにすり抜けて泡へと消えた。

 彼がいなくなる。

 文字通り、いなくなる。

 彼が

 死ぬ。

 理解はできていない。現実感も無い。けれど、漠然と。

 どこかでそれを認めていた。

「……っ」

 目じりに溜まっていた涙が一すじ。

 左目からこぼれ落ちていく。

「うぅ……っく」

 こぼれ落ちていく。

「うぁっ……うう……」

 止まらない。

「うっ……くぅ」

 止まらない。

「うぅぅ……うわぁぁぁ」

 ただ、この初恋が。

「あぁぁ……うう……っう」

 辛かった。


 明日になれば戦いが待っている。

 せめて、今日だけは

 泣いていよう。




 声を押し殺し、地に泣き崩れる彼女を見つめる2つの影があった。

「……楓」

 影の一つ。刹那が困ったように視線を惑わせて、最終的には後ろで腕を組み佇んでいるエヴァンジェリンへと行き着かせた。

「……その、声をかけたほうが?」
「ふん」

 刹那の問いには答えずそのまま面白くなさそうに鼻を鳴らし、エヴァンジェリンは踵を返す。

「え……エヴァジェリンさん?」
「……放っておけ」

 あくまでもぶっきらぼうな答えに対し

「ですが……」

 口をまごつかせる刹那。

 エヴァンジェリンはその態度に少し苛立ったようで、だが何かを思い出すかのように優しい口調で言葉を紡ぐ。

「……泣かせてやれ。アイツ自身にもまだ整理できていない気持ちが渦巻いているはずだ」
「……」

 納得がいっていない様子の刹那に、エヴァンジェリンは言う。

「それに……ああいう時は泣くのが一番だ。いや、泣くしかないという表現が一番かもしれんな」
「え」

 その顔、声色、表情、雰囲気。
「いいから、放っておけ」
「……はい」

 再度視線を楓に送る。

 確かに、未だに泣き崩れている彼女にかける言葉を刹那は持っていない。

 ――ここは本当に放っておいたほうがよさそうだ。 

「……わかったらさっさと寝ろ」

 どこか不器用だが温かいエヴァンジェリンの言葉に、刹那は小さく頷いたのだった。




「……」

 ――独り言を呟く気にすらならなかった。

 声を押し殺して泣き続ける楓の音を、エヴァ
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